[SS-SW] たとえばこんなこと

かず×けん×かずな未来編です。
スパークのペーパーでのっけた小話でございまする~。

あ、イベント参加は最後のつもりでしたが、SWもROもまだまだやりますよ!
オンがメインになりますが、オフしたくなったら友人に泣いて縋ります。
(そこ威張るトコ違う)

■たとえばこんなこと


高層ビル群がひしめく大通り。
普段でも人通りの多いその道は、お昼休みに突入したばかりの時間とあって、人波に流やすい自分にはまっすぐ歩くのが困難なほどにごった返していた。
それでも懸命に足を速めていたのは、人を待たせているという焦りがあったからで。

(うわ、ちょっと遅くなっちゃったなぁ)

ちらりと腕時計に目を走らせれば、待ち合わせの時間には十分余裕がある、決して時間に遅れているわけではない。
けれど、相手は学生で自分は社会人。
優しすぎる感がある相手のことだから、昼の時間をあまり使わせてはいけないと考えて、絶対に早めにきているに違いない。

(だから、データ送信午後イチにしようっていったのに、佐久間の馬鹿!)

一応、社のプロジェクトチーム内では上司にあたるはずの眼鏡のふやけた顔を思い出し、自分にしてはできる限りの悪態をつく。
もと同窓生で現在進行形の親友相手に、遠慮など必要ない。容量が多いからあとでまとめて送ろうと言った自分に、「圧縮してんだし、そんくらいすぐ終わるって。送っちまえよ」と軽く言い放ったのは彼なのだ。
そのくせ、言ったそばから自分はとっとと休憩に入ってしまった。
午後からすぐ仕事モードに切り替えるために早めの食事タイムとか言っていたけれど、本当のところはどうなんだか。
今日は、佐久間が通っているのカフェに、可愛い女の子がバイトに入る日だ。
最初っから僕に押し付けて出て行くつもりだったに違いない、と確信している。

(ほんと自分ばっかり……)

あとで絶対しかえしする、と心に誓ったものの、今日は割と時間に余裕があると最初から分かっていたのは僕も同じ。
すでに出来上がっていたデータなのだから同僚の誰かに頼んでも良かったのに、放り出してこれなかったのは自分の性格のせいなのだ。
就業時間は完全フレックスで、直属上司にあたる人物がアレなだけにわりとイン・アウトの融通が利く。
ちょうど用向きで同じ駅に出てきているはずの同居人相手に、「良かったら、お昼一緒に食べない?」と誘ったのは自分の方だった。

「いいの?」

ぱちくりと瞬かせて。
どんぐり眼になった彼の表情が、彼の使うアバターに似ていてとても可愛いなと思う。
出会ったころならいざしらず、少年だったはずの彼は瞬く間に変貌してしまった。
数年とたたないうちに身長を追い越され、スポーツで鍛錬した身体は引き締まり、声は艶やかな低音になり、女の子とも間違われた綺麗な顔立ちはそのままに、立ち振る舞いに男の色気まで含ませたとんでもなく魅力的な青年になってしまったのだ。
四年という年齢差があるはずなのに、普段はどちらが年上なのかわからなくなるほどで、たまに見せてくれる歳相応の表情がたまらなく愛しい……などとは、本人に対して口が裂けても言えない。
口にすれば最後、いろんな意味で明日がなくなるということを、数年かけてじっくりと思い知らされた。
鈍すぎるとかド天然とか、散々なことを言われ続けている自分だって、それくらいの学習はしているのだ。
幸か不幸かは分かりかねるけれど。

「そりゃ俺は嬉しいけど、健二さん仕事平気なの?」

とどことなく心配そう顔ながらも、本当に嬉しそうな響きを滲ませた彼の声に、じんわりと胸が熱くなる。

(ほんとに、いつも君は僕を甘やかしてくれるよね)

明日なら大丈夫だからと頷くと、彼の口元がゆっくりとほころんで……とても嬉しそうに微笑んだ。

(う……わぁ……)

甘さの宿った瞳に見つめられていると、条件反射のように自分の頬がかーっと熱くなってくるのが分かる。
この相手が、友人と言う名前から形を変えて側にいてくれるようになってからずいぶんと経つ。
けれど、自分に向けられるまっすぐな瞳とこの甘やかな笑顔にはどうしたって慣れようがない。
心臓がばくばくして、頭がぐらぐらして、何も考えられなくなっ
てしまう。
恥ずかしいから、とても口には出せないけれど。
彼の笑顔を見るためだったら、きっと自分は何でもするんだろうなぁ……なんて、相手に参ってる自分を再認識してしまって、ひっそりと心の内側で悶絶していた。
だから、今日は絶対に自分のほうが早く行こうと決めていたというのに。

(やっぱり佐久間の馬鹿!!)

自分の進行方向数メートル先に、目指す相手の背中を見つけてしまい、心の中で不満が再び炸裂した。
今のうちに横から追い越せればいいのに、なんていう考えがチラリと浮かんだが、この人ごみでは到底追い抜ける気がしない。
というかそもそも普通の人より目端の利く彼が、近づいた自分の存在に
気がつかないはずがない。
しかも、待ち合わせ場所のビルの前には、大通りをまたいだ横断歩道がある。

(無理だよなぁ……)

追い越すのはもちろん、追いつくのもあきらめて引き締まった背中を見ていると、横断歩道の信号は青だというのに、彼の動きがすっと止まった。
あれ? と思いながら少し横にずれて角度を変えてみると……彼の前にカートを押したおばあさんの姿があった。
背を丸めたおばあさんは、ぐんと成長した彼の姿にすっぽりと隠れてしまっているくらいに、とても小柄だ。
その老女が、行き先を探しあぐねているように、左右へと揺れていて。
結果的に、横断歩道を渡ろうとしている彼の行く手を完全に塞いでしまっている。
かなり長めの信号が点滅をはじめて、青から赤へと切り替わった頃、彼女はくるりと向きを変えて、もと来た道をゆっくりと戻っていってしまった。
きっと、あの老女は自分の後ろで人が待っているだなんて思いもしなかったに違いない。
そして、相手を急かす事もせずに、当たり前の様に信号待ちをしている彼を見て、ああ……と思う。
たぶん、自分は、こういう彼の何気ない仕草を目にする度に、(……好きだな)と思い知らされるのだ。
彼の優しさが心に触れたときから、きっと、相手の存在に溺れていた。

(君は僕のことを優しすぎるっていうけど、君以上に優しい人なんていないと思うよ。君は僕の事を誰よりも好きっていうけど、それ以上に僕の方が好きなってるんだよ)

声に出せない思いが胸にあふれて、くすり……と笑みがこぼれてしまった。
どうしてだろう、何で、こんなに幸せな気分になってしまうのだろう。

「……で、健二さんはいつまでそこでかくれんぼのつもりなの?」
「へっ!?」

突如耳もとに響いた魅惑の低音に、びくりと肩がはねる。
はっと顔を顔を上げると、数メートル先で信号待ちをしていたはずの彼の姿が目の前に。

「か、か、佳主馬くんっ! え、あ、いつ、気がついてたのっ!?」
「いま。待ち時間長いなと思って見回したら、目に入った」

彼は目ざといと知っていたはずじゃないか……と内心で臍をかんだが、見つかってしまったものは仕方がない。
で、何ニヤニヤしてたの? と不思議そうな彼に、そんなに顔が歪んでいただろうかと慌てて軽く顔を叩くいた。
いけない、最近どうも感情の回路がゆるみっぱなしになっている気がする。
言えるわけがないじゃないか、可愛いと思えるところが増えすぎて、どんどん君を好きになりすぎて困ってる、なんて。

「あー、えっと。……とりあえずご飯いこっか」

上の空で答えた言葉に、更に訝しそうに眉をひそめられたものの、僕の言葉に頷いた彼が当たり前のように手を差し出してきて。

(えーっと……)

公共だよなぁ、なんて一瞬ためらったものの、気がついたらしっかりと彼の手を握り返している自分がいた。








――数分後。
笑顔の彼に問い詰められて、見とれていた理由をあっさりと白状させられてしまったのだけれど。

「なんだ、そんなこと。それだったらこの間の新幹線の時の健二さんの方がすごいじゃない」
「………何かあったっけ?」
「これだから、もう……。巨大なトランクと大きいバッグ二つ抱えて、降りられなくて困ってた女の子の荷物持ってあげてたでしょ?」
「――ああっ!」

ぽん、と手を叩く。そういえばそんなこともあった、というかほんとにすっかり記憶から抜け落ちていた。
新幹線の停車駅で、海外旅行にでも行くみたいなものすごく大きなトランクとボストンバックを一人で抱えた女の子が、

荷物を下ろしきれなくて降りてすぐのホームで立ち往生していたのだ。

無常にも発車のベルは鳴り響くしという状態だったので、とっさに前にいた自分が車内に残ったボストンバックを抱えて降りた。
細すぎるとか言われるけれど、自分にだっていちおう成年男子して相応の腕力はある。
佳主馬くんが僕の荷物をほとんど引き受けてくれていたからだけど、一つくらいカバンが増えたところでどうってことはなかった。
むしろ荷物に手を出した不審者として疑われるんじゃないかと一瞬ひやりとしたが、少女はものすごく喜んで何度もお礼を言って去っていった。

「そういうこと、とっさにできる方がすごくない?」
「いや、でも、たまたま僕が前にいただけで、佳主馬くんの方が近かったらきっと君が動いてたよ」
「そんなことが当たり前って思う健二さんに惚れてるって言ってるの」
「…………」

それは君のことだよ!
 
と叫び出したい気持ちでいっぱいになる。
だからどうして、彼は自分を喜ばせるのが上手すぎるのだろう。

「ああ、でも」

ふっと、彼がいたずらっぽく笑って僕を見た。

「あの中身にはちょっと驚いたね」
「あ……うん」

佳主馬くんの声にうながされて、一部始終が鮮やかに脳裏によみがえる。
ぼくが運び出して、彼女が大切そうに抱えたボストンバックがもぞもぞと動いたと思ったら、ぼふっと中からミニチュアダックスフンドが顔を出したのだ。
まさか抱えた荷物に生き物が入ってるだなんて、想像もしていなくて唖然としてしまった。
手荒に扱わなくて良かったと内心で胸をなでおろしていたことまで思い出して、僕もぷっと吹き出した。
お互いに顔を見合わせて、くすくすと笑いあって、二人で一緒にご飯を食べる。

なにげない日常が、こんなにも愛しい。



おわり













だいたい想像ついてると思いますが、ほぼ実話です。(※脚色妄想甚大多大)

↑と、コメント付きで友人に読んでもらったら爆笑されたなどと……なんだよ、みんなだってじじばばブロックにあった

ことあるだろ! 
ボストンバッグには犬が入ってんだよ!(事実の部分が一番うそくさい不思議)

本の方ではあんまりいちゃついてないので、ちょっと糖分を投入してみました。
未来の二人はばかっぷるでいいと思います。
……あれまだ余ってる、えーとえーと。そういえばロスト~の方で書くの忘れましたが、
タイトルには一応それぞれ意味がありますが、一番書きたかったのは、ラストエンゲージ。
このエンゲージは婚約しちゃったわようふふふ……ではなく、ゲーム的解釈をしてます。
すなわち、複数の個体が同一座標に位置してるってことですねー。
自分で忘れるところでしたよ。
出会って、交錯して、別れて、すべてがかけがえのない記憶になる。
とか書くとカッコよくないですか?

妄想か……乙。

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