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[SW] LLC 8

[ 二〇一〇年 九月十日 ]


ピッという電子音とともに、ワールドクロックが二十二時の時報を鳴らす。
その音を合図に、陣内家のプライベートチャットルームに揃った面子が、一斉に立ち上がった。

『えっと……私に佳主馬、理一さん、克彦さん、理香さん、直美さん、太助さん、万助おじさんに翔太兄、あとは佐久間君で総勢十名ね』

軽やかな夏希の点呼とは対照的に、万助が重々しく頷く。

『全員とはいかなかったがな。まぁ、戦力ばかりが勝ち戦の秘訣じゃねぇってのはご先祖様が証明してくださってんだ。ようは気の持ちようってヤツの問題だな!』
『父さん、だから戦じゃないですって』

ガッツポーズで気合十分の万助に、息子である太助が慌ててたしなめている。
その弱腰がいかんと、万助のアバターであるイカ剣士の腕が太助のアバターの背中に直撃するシーンをばっちりと目撃してしまい、あわあわと短い手足をばたばたさせた。

『お、お二人の言う通りです、十分すぎますよ!』

思わず叫んだ自分の言葉に、

『でも本当に良かったのかい? うちのだって、参加する気は十分だったんだが』

少し訝しげに返してきたのは克彦だった。「うちの」が指している意味が奥さんの事だと気がつき、これも慌てて首を振る。
自分のアバターは頭が大きい分反動が大きい。首がもげてしまいそうだ。

『いいんです。最初に言った通りに、みなさん自身のことが第一優先です。そうじゃないと、僕が納得できません』

OZの主からの招待状が届いたあと、当然ながら誰が一緒に行くのかという問題が持ち上がった。
みんなで、とは口にしたものの、自分としてはそれぞれの日常を大事にして欲しいし、己の都合で無理などして欲しくはない。

『健二さんって、こういうとこほんとに頑固だよね……』

佳主馬の口調はあきれ返っていたが、こればかりは譲れないと頑なに言い張った結果、決行日に仕事などがなく、夜十時という時間帯に手が空いていて、ある程度OZの操作に慣れている人のみということになった。
当然、加奈や真緒といった幼年組と、彼らを見守る役目のある人たちには遠慮願うことにしたのだ。

『つーか、何で俺までこいつの手助けなんかしなきゃなんねーんだよ。久々の休みを潰されて迷惑だっつーの』

不満たらたらの翔太の声に、分身であるリスのアバターの体がびくりと跳ね上がり、尻尾がぴんとのびる。
(や、やっぱり迷惑かけてるよな)
無理をしなくてもいいからと言いかけた自分の声を、あっはっは! という高らかな笑い声が制した。

『相変わらずちっちゃい事言うわねぇ。だぁーからあんた女にモテないのよ』
『ふっふーん。ねぇ直美、私いーこと知ってんだ』
『なによ理香、その訳知り顔な感じ』
『翔太ってば、無理を承知で健二くんのこと上司にかけあって説教とか食らってんのよ。まー、この子も相当なツンデレよねー』
『なっ! んでそれっ……つか、別にヤツのためじゃなくって夏希が必死だったから……いや、くそっ、てめぇ、迷惑ならもっと堂々とかけやがれ!』
『は、はいっ!』

思わず勢い良く返事を返してしまい、あれこれで良かったんだっけ、と首を捻ってしまう。
やっぱりみんなに頼ったのは軽率すぎたかな……と少しばかり迷っていると、ぽんっと、軽く肩を叩かれた。

『ここにいるみんなはやる気十分で、ちゃんと余裕をもって参加してるってことだ。あとは任せたから……頼んだよ、健二くん』

言い聞かせるように、ゆっくりと話す理一の言葉が、じんわりと胸にしみこんでくる。
(そうだ。あとは、やるしかないんだ)

『ところで健二さん、全然戦略とか決めてないんだけど、このまま乗り込んでいいわけ。無謀じゃないの』
『大丈夫です。話し合いをしたいだけで、喧嘩を売りにいくわけじゃないし、危ないことはありませんから』

迷っている場合じゃない。
佳主馬の疑問に、はっきりと答えを返すと、隣から「ほんとかよ」……という呟きと、疑わしげな視線が寄こされたが、気にしない。
部活の延長と学校側に断りを入れてOZに接続しているので、互いの行動は筒抜けになっているのだ。
(ウソじゃない。戦うことだけが、勝つってことじゃないから)
直美と理香に囲まれてたじたじになっている翔太をみて、思わずくすりと笑って……決意する。
大切な人たちを、危険な目に合わせたりなんかしない。

『行きます』

僕の声とともに、それぞれが目的地の座標を打ち込んだ。


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