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[SS-RO] 誰かと誰か

単品でのっけても良さそうな話を掘り返してみました。
ちょっと暗めですれ違い気味。

今見るとアサとプリかなとか思ったけども、何でもよさそうな。


掘り返すためにバックアップデータのぞいたらば、
テキストページだけで200↑とかで、一瞬閉じてしまいました。
既に逃げ出したいです。
探すのもめんどくさいよズボラな自分のばか!
□□■影うつし




おもう おもいが おもすぎて

おもいでまでもが おもりにかわる



なまりのうみは ふかすぎて



ひとつ うそをかさねるたびに

おもいの おもさに こころがきしむ




しずむ


しずむ


しずむ









おぼれているのはだぁれ?







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それは──空の記憶。


いつの頃だったかは覚えていない。
ただ、抜けるような青と、 雲一つない空。
遮るもののない陽光が降り注ぎ、大地に三つの濃い影を落としていた。


「瞳にうつる影が強ければ強いほど、あざやかに空にうつしだされるんだよ」


空の青さを移した瞳のアイツがそう教えてくれた。
その言葉通りにくっきりと天空に映った影に、二つの幼い歓声が上がる。

微笑ましそうに自分たちを見る、その空色の瞳にうつるのは『自分であればいい』と。
思う気持ちは紛れもなく本心だったけれども。


アイツはあまりにもずるすぎる。
けっして消えない影を残して消えた。


もう、二度と会うことは叶わないくせに。
彼の瞳の中には、アイツの影が残酷なほどあざやかに映し出される。


永遠に消えない「影うつし」。





──これは、本当に影なのか。







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答えがわかっているというのに。
聞かずにはいられないのは…どうしてなんだろう。


……同じ顔の『あの人』と俺、どっちが好き?

なんて。
ホントウの問いを唇に乗せることなんてできやしない。


自分の存在を確かめたいのに、はっきりと彼の口から宣告されることが怖くて。
だから。
1%の真実と99%の虚偽で作り上げた笑顔で、俺は彼を振り仰ぐ。


「なぁ…君、俺のどこが好き?」


ふいに声をかけられ驚いたのか、武器の手入れをしていた彼の手がぴたりと止まった。


「……顔」

目の前の人物は物憂げに眉根を寄せながら、それでも、開かれた形の良い唇からはキッパリとした言葉が告げられる。

……そう。やっぱり。

俺は幾度目とも知れない吐息を心のうちにそっと落としつつ。
じくりと刺さるトゲの痛みを微塵も感じさせないくらい、ふわりと微笑んでみせる。


「俺も、自分の顔が好きだよ」


──吐き気がする、こんな顔。


「好きになってくれてありがとー」


──君が見てるのは俺じゃないけれど。


胸につかえる思い。
張り裂けそうなほどに己を焼きつくす炎が喉元までせりあがって、今にも口をついて出てしまいそうで。

……けれど、渇いた鈍色の瞳の前に俺の言葉は霧散してしまう。



──いい加減、俺の中に面影を探すのをやめてくれ。

──俺を見て。君の目の前にいるのは、アイツじゃない!!



言ってしまえばいい。


……言えるわけがない。

楽になれるのは、自分だけだから。
その瞳が俺の上を通り過ぎているとしても、お前がここにいてくれるのならそれでいい…。

この身に降り積もるちいさな嘘。
ひどく緩慢な仕草で俺を見つめる彼の気配。

顔は彼を向けたまま。
相手に気取られぬよう視線だけをかすかにそらせて、俺は何気ないそぶりで軽く声音を紡いでみせる。


「俺も、君が好きだよ」



(……君の瞳に映る影を、思い知らされたくない……)



いくつ嘘を重ねたら。
決して敵うはずのない……それでも抗わずにはいられない、アイツへの想いに届くのだろう。







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幾度目の事だろう。
くり返されるのはいつも同じ言葉。
あの人と驚くほど酷似しているその顔で……けれど、微笑みながらもどこか辛そうな鳶色の瞳で、彼がオレをじっと見つめているのを感じていた。


「なぁ…君、俺のどこが好き?」


静かに問うやわらかい声音がじんわりと耳を打つ。この声をもっと聞いていたいという誘惑に駆られながらも。
オレは決して声にはならない声を胸のうちで呟く。


──お前がお前であるという証のすべてが愛しい。


……などと。
決して、自分に許される言葉ではない。
苦い塊がじわりと胸を侵す。
当の昔に気付いてしまっているホントウの声には耳を塞ぎ、幾度目ともしれない嘘で塗り固めた偽りの答えを導き出した。

使い慣れた短剣の刃先を研磨していた手を止め、 オレはつとめて感情を含めないよう、無表情な声を吐き出す。


「……顔」


それ以外には興味がないのだと聞こえるように。
短く吐き捨てた言葉は、自分でも笑えるくらいに渇ききっていた。

ひどく緩慢な動作で顔をあげると、お前はオレの顔を見据えたまま、残酷なほど優しい微笑みを浮かべてみせる。


「俺も、自分の顔が好きだよ」


言いながら、ちょっと照れたように目を伏せる仕草が、匂い立つような色気を醸し出していて。
不意打ちの衝撃に、胸の奥底に沈めたはずの欲望が一瞬のうちにゾクリと身体中をかけめぐる。


掴み寄せて。
押し倒して。
思うが侭にその身体を貪り尽くしたい。


その髪に。
その肌に。
その唇に。

ただ、ただ……ふれてみたい。



激しく身を焦がす狂おしい炎を、オレは平静を装った顔の下で必死で押し殺す。
こんなにも醜い欲望を身の内に潜ませているなんて、お前は露ほどにも思っていないだろう……?

彼はふわりと笑いながら、艶やかな桜色の唇に軽やかな声をのせた。


「好きになってくれてありがとー」


遠いあの日のぬけるような空の色をとどめたあの人とは全く違う、吸い込まれるような大きな鳶色の瞳。
あどけなく……けれど、どこかに無理を隠して笑いかけてくるその儚げな姿に、次に言うべき言葉を封じられる。



──お前が欲しい。

──欲しいのは誰でもない、お前だけなんだ。



言ってしまえばいい。
けれど……一度口に出してしまえば、あの人の代わりなんだと思って安心している彼は、オレの側を離れてしまう。

些細な絆でお前を縛り付けようと足掻く、自分の浅ましさに吐き気すらしてくる。

それでも──悪あがきだと罵られても。
あの人の影を引きずる者同士の同情なのだと分かっていても、オレはお前が側にいてくれる理由を手放したくない……。


「俺も、お前が好きだよ」


歌うように彼は囁く。
紡がれた言葉はやさしすぎて。

覚悟はしているはずなのに……彼の瞳の中に、哀れみの色を見つけてしまうのが怖くて。



オレは無言で目を伏せた。







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思う 想いが 重すぎて

思い出までもが 錘にかわる



鉛の海は 深すぎて



一つ 嘘を重ねるたびに

思いの 重さに 心が軋む




沈む


──心も凝る海の底


沈む


──息継ぎすらも、忘れるくらい



沈む










───おぼれるくらい、そばにいるのに───。










fin

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