FC2ブログ

[SS-SW]コーヒーブレイク side:B

もしかして 佳主馬→→→←健二 かもしれんと思いはじめた未来の話。
視点違いの続き。
佳主馬は通われ夫(妻?)

あま。
■コーヒーブレイク side:B



ぱらりとページをめくりつつ、無意識に手を伸ばしたカップを口元で傾けてみれば、ほんの数滴申し訳程度に口の中に落ちてくるばかりで。

……あれ。もう飲みきっちゃったんだ。

サイドテーブルにカップを戻しつつ、壁掛けの時計をチェックすると、本を読み始めてから既に軽く70分は過ぎていた。
と、いうことは……だ。
ちょうど自分の座ってるソファーの向こう側で仕事をしている、彼専用の大き目のカップになみなみと入っていたはずの黒い液体は、もう二口程しか残っていないはず。

手元の本を伏せてそっと目を上げると。
タタン…と、リズミカルに指をキーボードの上で滑らせながら、すっかり冷え切ったマグカップに手を伸ばす相手の仕草が見て取れた。

「……あ」

マグカップにつけた唇を離して。
つい口をついて出てきてしまったような小さな声に、思わず「どうしたの?」…と声をかけてしまった。
相手の邪魔をするつもりは微塵もなかったのに、手を止めてまで自分を振り返る気配にちょっとだけ申し訳ない気持ちになる。
けれど、

「うん、気のせいかな。甘いなって思っただけ」

と何気なく返された言葉に、僕は目を丸くしてしまった。

「うわ、すごい。佳主馬くん正解」
「正解?」

訝しげに問い返す佳主馬くんに向かって、こっくりと頷き返す。

「今回の抽出方法って、淹れたての熱いのも味が濃くて深みが増すんだけど、ぬるくなってきた時もしっかり味と香りが残ってるというか、まるくなって美味しさが増すんだって。常温になった時が一番甘味の違いがわかるって言われたんだけど、ほんとだったんだね」

やや興奮気味に勢いづいて語ってしまった自分に気がついて、ちょっと恥ずかしくなりつつも。
やっぱり佳主馬くんすごいなぁという思いで相手に向かって笑いかけたら、ぱっと顔を背けられてしまった。
あれ、何か変なこといっちゃったかな。
気を悪くさせてしまったかもしれないと焦る僕の前で、くるりと向き直った彼の端正な顔に、どこか楽しげな笑みが浮かんでいて。

「ふうん――健二さんみたいだね」
「……ふへ?」

ぼそりと告げられた言葉の内容に、思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。

「はじめのうちは指の先が触れるだけで熱くてとけそうで。俺を酔わせる香りに頭の芯が痺れそうになってくらくらして。でもずっと傍に……腕の中にいてくれるようになってから、だんだんその温度がちょうど良くなってきて、肌になじんできて……」


―――すごく甘くなる。


いつの間席を立ったのか。
近づきすぎた相手との距離に全然気がつけなくて、ふいに耳にふきこまれた吐息とあやしく秘密めいた声音に、かっと頬が熱くなる。

「やっ、ちょっ、と……なんか、それ、ちが……くない?」
「違わない」

ぱっと耳を押さえて、しどろもどろに返した反論は、容赦なくすっぱりと叩き落された。
僕をじっと見つめる彼の顔は、意味ありげにニヤニヤと笑んでいる。
うわ……ぁ。
不敵な表情が似合いすぎて反則だとか、声に混じった艶に心がざわりと揺れただとか。
いっぺんにおそってきた感覚に耐え切れず今度は頭を抱えたら、ぷっとふきだす笑い声が頭上から落ちてきた。

「健二さんってホント不思議だよね。苦味とか酸味はとかちゃんと味わうクセに。子どもみたいにピーマンは除けるし」
「……それは……小さい頃に身に染みてしまったクセっていうか……もう、見逃してください」

体を揺らして楽しげに声を出して笑う相手に向かって、勘弁してくださいと両手を挙げて降参のポーズ。
今度は紅茶でも用意するから許して、といえば。
うん…と囁きながら差し伸べられた相手の手のひらが、僕の頬をそっと包んで。
あれ、とか思う暇もなくぐんぐん近づいた相手の瞳の中に、ぱちぱちと瞬きをくりかえす自分の顔が映りこんで見えて。



「……ごちそうさま」



なんて超至近距離で言われた満足げな言葉に、

………まだお茶淹れてないよっ!?

っていう、的外れの抗議を出してしまったとか。
その声も、相手の口の中に消えてしまったとか。



そんな日常。

comment

管理者にだけ表示を許可する

10 | 2019/11 | 12
Su Mo Tu We Th Fr Sa
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
New
Category
Archive
Link