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[SS-RO] ハンタ×アサ 前編

ハムアサ(♂×♂)です。
ペットのお話です。
といっても、キューペットシステムとは一切関係ありませぬ。


万に一つの奇跡をのぞんだわけじゃない。


願ったのは、ほんの些細なこと。
「そんなことか」と一笑されてしまいそうな…でも、自分にとっては限りなく大切なこと。

こぼれ落ちる小さな吐息には諦めすら帯びているのに。
狂おしく焦がれるこの想いは、叶わなくても仕方がないのだと言い聞かせるたびに。

敷き詰められた悲しみのトゲが、魂を縫いとめる。


──あいたい。


純粋すぎる願いは、研ぎ澄まされた針にも似ていて。


愛しすぎて。
哀しすぎて。


重なる想いの切なさに、呼応する心が悲鳴をあげる。


会いたい。
会いたい。
会いたい。


──ただ、それだけ。


だから。
私は「あなた」に会いに行く。



『……泣かないで。
 きっと、叶えてあげるから』









『あなた』 は 『わたし』がわかりますか?











■君の声に届くはず (前編)


[アサシンSide]


トン…と肩に走った鈍い衝撃。
突き飛ばされた?…と知覚したのは一瞬後で。

「カリィ?」

考えるよりも先に、言葉が口を飛び出していた。

「前衛を押しのけてどうする!?」

かろやかな風が舞うかのごとく。
足元の小石をカツンと跳ね上げ、彼はするりと私の横を駆け抜けた。
走り抜けざまに矢をつがえ、ゼロ地点で対峙した魔物の空虚なる瞳を一瞥し。
眉間に標準を定めきりりと弦を引き絞る。

ぴんと張り詰める一瞬の緊張感。

「ダブルストレイフィング!」

ぱしぃん……炎をまとう矢が対になりて、不死の民の頭部に絡み合うように突き刺さる。
弦をはじいてなお揺るぐことの無い残身に、「綺麗なものだ」と思わず目が吸い寄せられる。

流れるような流麗な仕草で、彼はすっと腕を伸ばす。
軽く結んだ唇から高く鋭い音が鳴り響く。
と、同時に。

──バサっ

虚空を支配する女神の如く、黒い一点の影が頭上から舞い降りた。

純白の附を散らせ、大きく翻った翼を視界に捉え。
まるで、天から舞い落ちる雪のようだと感嘆する。


──ブリッツビートッ!


乾いた骨が勢い良くはじけとび。
カラカラと音を立てて崩れ落ちた魔物、ソルジャースケルトンの末路を確認し。
……軽く息をついて。
綿毛のような真っ白な髪をふわりとなびかせて振り返った彼──カーリウスは、唖然とする私を苦虫を噛み潰すかのように口元を歪めてきりりと睨み付ける。

「どうするつもりかって?……それはこっちのセリフです」

すっと目を細め、目の前の人物の声音に宿った責めるような響きの意味がわからず。
軽く首を捻ると、ハンターは絹糸のような前髪をさらりと揺らし、額に手を当てあからさまに小さくため息をつかれた。

「いつも言ってるじゃないですか」

瞳に宿った苛立たしげな光が、彼の琥珀の両目を一層深く鮮やかに際立たせていて。
一応神妙に耳をかたむけながらも、まるで金細工の宝珠のようだな……などと本人に言ったら「真面目に聞いてください!」とブチ切れられそうなことをぼんやり考えてしまう。

「ハンターって確かに遠距離攻撃を得意としていますけど、僕は身をかわす術を中心に学んでいるんですよ。
  だから少しくらい接敵してる魔物がいても大丈夫なんです。
 いくら君がアサシンだからって……回避に長けた職業だからって、一手に引き受けて囲まれたら、かわし切れなくなるの当たり前ですよね?」

疑問系をとりながらも、まぎれもない断定。
視線をしっかりと捕らえながらの有無をいわさぬ相手の迫力に、思わずこくりと頷く。
……でも、いま即沸きしたのは2体だったような?
回避が苦しくなるのは3体目からなのだが……という公然の事実は、口にしない方が賢明な気がした。

「あー…えーっと……」

ぽりぽりと頬をかきながら、とりあえず口を開く。
普段から少しきつめの言い方をする彼だけれど、今日の不機嫌具合はまた格別で。

……また怒らせてしまったのか。

伝わってくる一速触発なそら恐ろしい気配に、どうしたものかと思案にくれる。
そもそも、アルデバランに出かけたはずのカーリウスが何故ここに──フェイヨンのダンジョンにいるのかという疑問もあるのだが……これも、口に出したらまずいような気がした。


自分はどうも一箇所にじっとしているのが苦手で、フラリと狩り場を転住してしまうクセがあって。
二次職であるアサシンの資格を得たといえども、まだまだ装備は整っていないし、力不足なもので。
仮死状態で街に戻る回数の方が圧倒的に多い私は、相方であるハンターに対して、かなり負担をかけているという自覚はそれとなくある。
……少なくとも、見知った人間が血まみれで転がっている様を見せられるのは、気持ちの良いものではないだろうから。

……たぶん、今も心配してくれたのだろう。

彼の、射るような視線にたじろぎながらも。
なんとなく、それがすこし嬉しいと感じてしまうのは不謹慎だろうか。

「すまなかった」

ゆっくりと彼の顔を振り仰ぎ、謝罪の言葉を口にすると。
ハンターは虚をつかれたかのように息を飲み、軽く眉根を寄せながら何かを小さく呟いていた。
何を言っているのかまでは聞き取れなかったのだが──先ほどよりいくぶん空気が和らいだ気がする。

バサバサと羽ばたきの音が聞こえ、雪のように白い塊が当然のように差し出されたハンターの腕にふわりと舞い降りた。
周囲の様子を巡回してきたのだろうか。
すっと首を傾げ、主に何事かを告げようとする『彼女』の仕草に、思わず目を奪われる。

主人の腕で艶やかな純白の翼を休める彼女は、とても美しくてとても賢い。
何気ない視線や指の動きで気持ちを通わせる彼女と彼の間には、口ではとても言い表せないような絆を感じて。

「白姫は本当にカリィのことが好きなんだな」

自分にはあまり動物は懐かないから…と、二人を見つめながらごく自然に浮かんできた言葉を口にした瞬間。
カーリウスはなにやら不機嫌そうに、うろんな瞳で私を見つめかえしてよこした。

……何が気に障ったんだ……?

軽く焦りながら思わず視線を逸らせると、空気を縫うかのようにバサ…と翼の擦れる音が響いた。

「しらひめ?」

つとハンターの腕から脚を離し。
真っ直ぐに私の方へ羽ばたいてきた彼女の姿に。
声をかけながらなんとはなしに手を伸ばすと、冬を司る姫君はその獲物を引き裂く鋭利なツメをたてることもなく。
そっと私の腕に降りてくる。

「私の相手をしてくれるのか?」

ククゥ……と甘えるように首を傾げてくれる彼女の様子に、私は思わず口元がゆるんだ。


「姫は優しいな」
「──そうですね」


可愛いというよりは『綺麗』という言葉が相応しい真綿色の髪のハンターが、私の言葉を受けてにっこりと微笑む。


……いや、まて。


毎日くどいほど『鈍い』といわれつづけている自分でも分かるほどに。
彼の笑顔の裏側には……なぜだか、先ほどよりも格段に恐ろしいオーラが渦を巻いていて。
薄暗い洞窟の中だから、などという理由では追いつかないほどの寒気がぞくりと体を覆う。


つと。
かすかな物音が私の耳を打つ。


──これは……?

ふと周囲に目を走らせ……映った光景を理解した瞬間。
私はその場から駆け出した。

「って、言ってる側からーっ!!!」

ハンターの悲鳴が背後から聞こえてきたが、構っている余裕など無い。
私の視界にあるのは、おどおどと忙しなく回りを窺っている藍色の髪のノービスと……何ひとつ気付いていない少年に標準を定めている闇の凶器。

考えるより先に体が動いていた。

「伏せろっ!」

アーチャースケルトンが放つ矢と。
いきなり怒鳴られてわけがわからず硬直している少年との間に飛び込む。

──ピィィィィーッ

空気を切り裂くような鳴き声とともに。
真っ白な身を躍らせた白姫のツメが、私の目前に迫り来る矢を的確に捕らえ、弾き飛ばす。

「ダブルストレイフィング!」

同時に放たれた俊足の矢が不死の民を体ごと弾き飛ばし、粉砕する。
一糸乱れぬ攻撃の連続。
こういうのを阿吽の呼吸というのだろうか、素晴らしいコンビネーションだ。

「ライン……君、僕の言うこと本当に聞いてますか?」
「いや、あの……すまん」

静かに弓を下ろし。
くるりと振り返った凍りつくような笑顔に、思わず本気で逃げだしたくなった。
攻撃するには間に合わなかったのだ……などといういい訳は、到底聞いていただけそうもない。
つう…と背筋に冷や汗が伝う。




「ありがとうございますーっ!!」

場違いなほど大きな声が洞窟内に反響した。
ようやく状況を理解したのだろうか。
蒼白になりながらも何度も頭を下げる少年の様子に、いちおう一人立ちしているであろう彼に対しては失礼かもしれないが……まるで親とはぐれ、道に迷ってしまった子犬のようだと思ってしまい。

「いや…無事で良かった」

思わずふっと顔をなごませながら、ぽん、と軽く背を叩くと。
今度は一気に安堵したのだろうか?
彼の顔が見る間に赤くなった。

幼さが残る顔立ちからは、どうみてもダンジョンで腕を試すようレベルには見受けられなくて。
たぶん、弓手志望でフェイヨンまでやってきて。
好奇心におされてダンジョンに足を踏み入れてしまったのだろう…と、予想をたてながらしどろもどろに語る彼の声を拾う。
大方想像通りの言葉が返ってきて、「よくまぁ無事に1階を通りぬけてきたものだ」と、呆れるのを通りこしていっそ感心してしまう。



──カリィ…。

私は思案しながら囁きの魔力を紡ぐ。
…すると、間髪いれずに。
打てば響くような音のない声が返ってきた。

──いちおう言っときますけど、僕たちが保護して連れて行ってあげるのはこの子のためにならないですよ。
仮にも冒険者として生きていくつもりなら、甘やかすという行為は強者の優越感の押し付けになります。

──……そうか。

流れるような、しごくごもっともなカーリウスの意見に納得する。
厳しいかもしれないが、これも確かに冒険者としての試練なのかもしれない。

念のために回復薬と移動の魔力を秘めたアイテムを手渡し。
「きっとご恩返ししますから!」…と瞳をきらめかせる少年に、気にしなくていいからと告げ、手を振って分かれる。
恩返しとかそんなことを考えるよりも、今は無事に帰り着くことに全神経を集中して欲しい、と。
いまひとつ頼りなげな後ろ姿を見守りつつ願う私の背後から、ピリピリと感じる尖った気配は……やっぱり、怒っているというのが一番近いだろうか。


どうしてなのか、と思う。
どうして自分は、この人を苛立たせることしかできないのだろう。
……私は心の内で小さくため息をつく。


「アサシンは猫のようだといいますけれど……本当ですね」


私に向かって伸ばしかけた手をとめて。
「すぐ側にいるようで。手を伸ばしたら、するりと逃げてしまうんですから」……長い睫毛を伏せがちに、自嘲めいてやるせなさそうに呟く彼の表情に。


ちくり…と。
『わたし』の胸に針が刺さる。



   ………せて。
   ………たい。



体の奥底から込み上げてくる熱い塊。
内側を抉るように暴れまわる感覚を押さえつけるように。
そっと目を逸らし、手のひらを白くなるほどに握りしめる。



そうでもしないと。



激しく荒れ狂う熱が、喉の奥からあふれ出してしまいそうで。



だめだ。
いまは、まだ。
そのときじゃない。



体の奥底で、魂を引き裂くような悲しい声が響く。


もう少し──もう少し、だけ。





時間が欲しい。









……私の中には「わたし」がいる。


「わたし」は「あなた」に会いたいと願う。


焦がれすぎて。
狂おしすぎて。


内側を焼き尽す熱情に。




こころがはじけてしまいそう。












[ハンターSide]


「どうするつもりかって?……それはこっちのセリフです」

睨みつけるように振り返り、返した言葉に詰るような響きを込めてしまったことぐらいでこの昂ぶった感情はおさまりようもない。

大らかといえば聞こえはいいけれど、気まぐれでのんびり屋の暗殺者──ラインが、唐突にふらりと姿を消してしまうクセがあるのは、もういい。
相方なのだから当たり前のことかもしれないが、呼びかければすぐに答えるし、最後にはちゃんと僕のところに戻ってくるし。
束縛を厭っているのはこの人の本質なのだからと、納得することもできる。
けれど。

……いい加減、死に戻るのだけは勘弁して欲しい。

自分の体を大切にしてくれと口にするたびに「分かった」というくせに。
カケラも考慮してくれたためしはない。

「いつも言ってるじゃないですか」

語気を荒くした僕の様子に戸惑っているのか、わけがわからないと言うように首を傾げた彼の仕草に、怒りの虫が破裂寸前になる。

今まではいい。

悪運が強いのか、傷だらけになって帰ってきても、癒しの魔力を発動させればそれらは全てきれいに消えうせた。
ただし、平気で身を呈して他人を庇うような無茶をしていては、命すら危ういような状態で戻ってくるのも時間の問題だ。


……ほんっとに君って人は!


どこの誰が。
好きな相手が毎回血まみれになって帰ってくるのを、平常心で迎えられるというのだろうか。
ものすごい忍耐力を総動員させて『手枷足枷首輪もれなくセットの軟禁飼い殺しプレイ』を踏みとどまっている、自分の理性を褒めてあげたいくらいだ!

「あー、えっと」……と、一応は僕の怒りを感じ取ったのか。
口篭りながら僕を見つめてくる彼の視線を感じながらも、無言で睨み返してやる。
ええ、ものすごく怒っているんですよ、僕は。

「すまなかった」

ゆっくりと僕の顔を振り仰ぎ、謝罪の言葉を口にする彼の顔はいつもどおりの困ったような表情をしていたけれど。
いつもはかたく結ばれている口元には、紛れもない笑みが浮かんでいて。

……反則です、それはっ。

ふいうちの笑顔に僕は思わずうっと息をつまらせ、慌てて彼の瞳から視線を外した。
目の前にいる自分の纏う色よりはいくぶん深い銀の髪のアサシンは、決して醜悪なわけではないが際立って整っているわけでもない。
いわるゆその辺にごろごろ転がっていそうな極めて平凡な顔立ちなのだけれど。

……無自覚で、これですか…?

ふとした瞬間に垣間見てしまった、こぼれるような笑顔に一発でやられてしまった。
ああもう、この場で押し倒してくれようか──どうせ技は僕の方が上回っているんだし、力任せじゃなくったって逃げ道を塞ぐ方法ならいくらでも……と算段をめぐらせていると。
見計らったかのようにバサバサと羽ばたきの音が聞こえ、周囲の警戒にあたっていた白姫が僕をめがけて降りてくるのが視界に映る。

ちっ……と目の前の相手には気づかれないよう軽く舌うちをしつつ、つと腕を伸ばすと当然のように一仕事を終えた彼女が僕の腕に舞い降りた。
すっと首を傾げ、僕にゆっくりとした断続的な鳴き声を響かせ、とりあえずの危険はないことを伝えてくる。
報告してくれるのはいいけれど、美味しいところを邪魔されたと思ってしまうのは僕が穿ちすぎなのか。

「白姫は本当にカリィのことが好きなんだな」

自分にはあまり動物は懐かないから…と、本当に羨ましそうに目を細めて見つめてくる彼の表情に……少しばかり──いや、とてつもなくむっとする。

仲がいいのだと妬いてくれるのならばいい。
けれど、これは違う。

『僕』が『白姫』に好かれていることよりも、
『白姫』が『僕』に懐いていることを純粋に羨ましがっているのだ。
ここぞとばかりに、彼女はアサシンの元にすりよってゆく。

「私の相手をしてくれるのか?」

無意識なのだろうが、恋人にでも語り掛けるように優しい声音で彼は彼女に声をかける。
人間相手だと困ったような顔しかしないくせに。
動物相手にはふわりと無防備に口元がほころぶんだ、この人は。

そのやわらかい包み込むような笑顔が、どんなに周囲を魅了するのか、全くもって理解していない。

「姫は優しいな」

……違う。
激しく間違っている。

世間一般常識として、ペットと飼い主はよく似てるというでしょう?
肉食で選り好みの激しい猛禽類が、どうして大人しく主以外の腕におさまっているのか。
……主人と好みが一緒ってだってことに、何故気がつかないかな、君は。

「──そうですね」

まったくもって危機感のないアサシンに向かって、にっこりと全開で微笑み返してやると、笑顔の裏側の怒りを感じ取ったのか。
ラインはどうしたものかと思案にくれるように、小さくため息をついた。
焦りが伝わる彼の態度がおかしくて、笑い出しそうになる衝動をぐっと堪える。


そう、考えて?
僕が何故、こんなにも君の存在にかき回されているのかってことに──


「って、言ってる側からーっ!!!」


何の気配を察したのか。
身を翻し、突然駆け出したアサシンの行動に虚をつかれ。
視線を送ると、その先にはキリリと矢を引き絞り、間抜け面してキョロキョロあたりを窺っているノービスに標準を定めている不死の民の姿がって。

……ぜっっったい庇うつもりだっ! このバカっ!!

瞬時に矢を番える僕の耳元で、バサリ…と羽ばたきく翼の音が聞こえる。
こういう時の白姫は本当に頼りになる相棒だ。

何しろ、決して『傷つけたくない』と思っている相手は一緒なのだから。









「ありがとうございますっ!!」

暗くじめつく洞窟内にキンキン響く甲高い声。
お騒がせなノービスの坊やは、やっぱりというか、なんというか。

「好奇心が」とか「物珍しくて」なんて御託を、つっかえつっかえ話していたが……平たく言うと迷子になったらしい。

礼の言葉を口にしながら、何度もぶんぶんと頭を下げる仕草が、まるでいじめっ子から助けてもらった子犬のようだ……と思った瞬間。

いやーな予感が脳裏をよぎった。

案の定、バカみたいにぽかんと口を開けた犬っころノビ助の顔が、みるみる内に朱色にそまっている。
心配げに覗き込むラインの顔を正視できないのだろう。
滑稽なほど慌てふためく少年の様子に……またか、という思いがよぎり。
思案気に首を傾げた彼の様子から、次にくるべきだろう言葉に対して身構える。

──カリィ…。

──いちおう言っときますけど、僕たちが保護して連れて行ってあげるのはこの子のためにならないですよ。
仮にも冒険者として生きていくつもりなら、甘やかすのは強者の優越感の押し付けです。

──……そうか。


案の定。
こちらの反応を窺うようにそろりと届いた囁きの魔力に、僕はすかさず先手で釘を打ちまくった。

冗談じゃない。

何だってわざわざ邪魔者を増やさなくっちゃいけないのか。
子どもといえども相手は無駄に思考する生身。
不穏な芽は早期に根絶しておくに限る。
とちあえず立ち位置が近すぎるんだよっ。退けっ!

引き離したい一心で、もっともらしく並べ立てた理由に納得がいったのか。
名残惜しくしているアサシンの表情には無視を決め込み、僕らは分不相応なほどのアイテムを手渡し厄介者……もとい余計なところに沸いて出てきやがった最弱のモブを放り出す。

とっととくたばって戻ればいいものを。
……などと、本音を口にしなかっただけでも有り難いと思っていただきたいんですがね。
ご恩返し?──どの面さげて口にするかこのお子様は。


出口へ向かって遠ざかってゆく少年の後ろ姿を、じっと見守り続ける彼の姿に。
どうしようもないほど心がかき乱される。

誰かが彼に声をかけただとか。
彼が誰かの話題を口にしただとか。
まるで子どもの独占欲のように、些細なことで身体中を支配する嫉妬心。

分かっている、焦っても仕方のないことだと。
けれど。

「アサシンは猫のようだといいますけれど……本当ですね」

思わず背中から抱きしめてしまいたい衝動に駆られて。
彼に向かって伸ばしかけた手をとめて、手のひらをきゅっと握り締める。

「すぐ側にいるようで。手を伸ばしたら、するりと逃げてしまうんですから」

自分に言い聞かせるように、静かに苦い笑みをこぼした僕の表情を目に留めて。



……彼の瞳が、大きく揺れた。




いつも僕の手から逃げてしまうくせに。

なぜ、そんな瞳で君は僕を見つめるの?

恐れるような……怖がるような……恋するような切ない瞳で。



何もかもを飲み込むように、かたく唇を閉ざした君。

あなたは、何を抱えているのですか?







きみの、こえを、きかせてほしい。









[?]

一緒にいられると信じていた。
どこまでも。

ずっと、ずっと。



けれど。

きがついたら、じぶんひとりきり。

どうして、わたしをひとりにするの───?



あいたい。
あいたい。
あいたい。


あなたに、もういちどあいたいの。
こがれる想いが、あふれだす。


会わせて。
会いたいの。


  ……叶えてくれるんでしょう?


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