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[SW] LLC 4

[ 二〇一〇年 八月二十六日 同日 ]


優柔不断で内気で弱気、過ぎたことで悩んでるのが得意技のような自分の親友は、この夏の騒動で少し改善されたらしい。
できないとあきらめるよりも、できるかもしれないと。
少しでも可能性があればチャレンジしてみるという、とても前向きな方向へと変身を決めてくれたのだ。
とはいっても、相変わらず言動は気弱で情けないのだが、何か吹っ切れたその行動力に、ようやく健二も人並みに成長したかと自分の事のように嬉しく感じていた。
なのに、
(もうちょっとダメ人間でいてくれ)
相手にとっては理不尽な願いを、強く心に念じる。
自分は、決して彼が魅力的な彼女候補を手に入れて「リア充爆発しろ!」などと思っているわけではない。
むしろ、最初で最後になりかねない友人の華々しい成果を、本気で応援してやるつもりでいる。
が、今この瞬間だけは、真剣に呪いをかけずにいられない、自分なりの理由があるのだ。


――遅かったか……。

定員二名のチャットルームの扉に、見覚えのありすぎるふさふさとゆれる尻尾が吸われて消えて。
ご丁寧にもガチャリと音つきで鍵が閉まる様を絶望的思いで見つめる。
いつものドットアバターでは素性がモロバレだからと、複数串刺しで完全に自分を消し去ったゲストアバターで駆けつけてきたのだが、タッチの差でこの手は届かなかった。

「頼む、解いてくれるなよ……」

モニターに向かって呟いてみたところで、返事があるわけでもなし。
その間も休むことなくキーボードを叩く手は高速回転。
気休めでもないだけまし、うまくいったら上々――。







ちゃちゃちゃちゃーちゃちゃ~♪(Lvあーっぷ)


万が一を想定して仮組みしていたプログラムを打つ手がピタリと止まる。
自分で設定しておいてなんだが、明け方の部屋に響いた間抜けな電子音に、冗談抜きで体がガクリとよろめいた。

(だから解くんじゃねーっつぅのっ! あんの数学馬鹿ーーーーー!!!!!!!!!)

出来ないとは思わないあたり、罵倒している相手の数字解明能力にかけて全幅の信頼を寄せている……というよりは、正確に状況把握出来てしまう自分の性能のよすぎる分析能力が少しばかり恨めしい。

いっそ気がつかなければ――いや、なそんな過程と想定は無駄、ムダ、むだ。
起きてしまったことに「たられば」なぞ無価値もいいとこ。
立ち止まるヒマがあったら少しでも可能性を探った方がよっぽど有益、軽くてもいいからプラス思考が俺の信条。

「ったく。なんだって俺がこんな必要もない苦労をしょわなきゃなんないんだっつーの。酷すぎると思いませんこと奥様。かわいこちゃんならともかく、対象人物は冴えない一介の高校男子生徒で、ただの手間のかかる友達にしか過ぎない相手にわが身を省みぬ献身的行為とか……うわ自分で言ってて空しくなってきたわ敬くんかわいそーうしくしくしく……うむ、だんだん一人芝居もアホらしくなってきましたぁ~~~、よっと」

パシン!

勢いよくエンターキーに小指をたたきつける。
これで当座の時間かせぎはできるはずだ。
っていうか、出来てなきゃいろいろ終わり。ジ・エンド。

「んーと足跡がこれで履歴が……ああこれか。さすが堅い回線使ってんなぁ。行き過ぎたファン行為とか言ってバッシングされるくらいならともかく……これキングの信者にバレたら闇討ちされっかもねぇ。おおこわ~~」


カタカタとリズミカルに文章を打ち込み、幾重にも偽装を咬ませた電子文章を狙い済ませた相手向かって放り出す。




――さぁ、負けられないゲームのはじまりだ。









(セカンドウォーズ/終)


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