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[SS-RO] 騎士×アサ(♂×♂)+子アコ

へたれ騎士×敬語アサ+しっかり子アコ
♂×♂です。
プラスアルファな子アコがきーぽいんつ。
ロリっこは正義!

http://lieting.blog2.fc2.com/blog-entry-38.html
の続きになんですが、これだけでも大丈夫かと。


[ 等身距離 ]




ぬけるような青空と、ゆるやかな日差しが心地よい午後のひととき。
土地勘のない者だと迷ってしまいそうな小路を抜け、俺は慣れた足取りであいつの家の方へと足を向ける。
何度も来たことのある赤い屋根の角をまがり、いつも通りに少し古びた風合いのある扉を勢いよく開けようとすると。

……予想外の抵抗力が俺の手を止めた。

ドアの隙間からのぞく小さな手。
愛くるしい人形のような顔立ちのアコライトの少女が、俺を見上げた形で人差し指を唇の前に掲げ、『しー』と音のない静止をかけてくる。

「……ツァルか……どうした?」
「ちちさま寝てるです。静かにしないとだめなのです」

真剣な顔をしたアコライトが、俺を招き入れるためにゆっくりと扉を開けてくれる。
ツァル──ツァルニーダというのがアコの名前で。
家主であり相方兼恋人であるアサシンが、ひょんなことから引き取って養うことになった彼の姉の子どもだ。
扉の内に体を滑り込ませながら、俺はかっくりと首を傾げる。

「アイツが昼寝? そりゃまた珍しいこって」
「ちちさまゆうべ寝てないですよ。ずーっと灯りがついてたですから、きっと新しい本に夢中になってたです」
「またか?……アイツ、アサシンだったよなぁ」

苦笑混じりの俺の声に、アコライトはためらいがちに小さく頷いた。
アイツに不利なことは肯定したくないけれど、困惑も否めないといったところなのだろう。
ツァルニーダは、家の奥にちらりと視線をなげかけ、はぁ……とため息をついた。

「とーさま来てくださって助かりました。もう食べるものが底をついてしまったですよ」
「あー……だろうなぁ」

三日前に来たときにはあふれんばかりの食材が満ちていた棚は、今は見る影もないほど見事に空っぽだ。
養い親である件のアサシンは、細身で華奢なくせに、えらく大食漢なのだ。
あのすさまじい量があの体のドコに入るのか本当に不思議でならない。
人体は小宇宙といわれるらしいが、アイツの胃袋はブラックホールに違いない。

「放っておくと、ちちさまゴブの生肉食べるですよ。ちゃんと買い出しに行きたかったですが、寝てらっしゃるちちさまを放っていけなかったです。とーさま、お留守番よろしくなのです」

メモを片手に買出しのリストをチェックしながら、小柄なアコライトはてきぱきと身支度を整えている。

「ってーか、買い物なら俺が行ってくるぞ。アイツの食う分だったら、相当重いだr……」
「口に入ればいいとかいう味覚音痴には用がないのです。力任せのVit騎士のとーさまは、黙って大人しくちちさまの番犬してればいいのです」

手出し無用とばかりに言い切ったアコライトの声は、とてつもなく強かった。
さすが相方の血縁者と思わせる俺好みの可愛い顔してるくせに……こう見えても立派な殴りアコなんだったな。
妙に鋭いこの少女は、とーさま起こしちゃだめですよ?……と、さりげなく念を押すことも忘れない。
ツァルの日々のファザコンぶりはよく分かっているので、今更それに関してどうこう言うつもりはないが。

……お前ら、二人まとめて俺に対する態度が違わないか?

アイツのことは『ちちさま』と呼び、俺のことは『とーさま』と呼び分けているあたり、親しい仲として認識してくれているとは思う――子どもの情操教育に父親二人っつーのはどうかということはさておいて。
当たり前の様に家族の生活圏内に入れてくれるあたり、決して疎外されているワケではないとも思う。

……思うが……あんまりトゲばっかりだと、ちょっとばかりすねるぞ。

俺の心の声が漏れたわけでもないだろうに。
ナイスタイミングで、戸口に立った愛娘がくるりと振り返って。
何かを思い悩むように、ほんの少し視線を周囲にめぐらせて。
至極真面目な表情で、ゆっくりとさくらんぼ色の口を開いた。

「あ…でも、ツァルいっぱい買い物あるですから。ゆっくり時間をかけて選んだ方がよさそうに『なった』なら、とーさまはツァルにうぃすくれるといいです」

………。
………。
………。

にっこりと。
無邪気なアコライトさまは、まさに天使の微笑みで小首をかしげる。

気のせいか?
紛れもない聖職者の卵のくせに、彼女の背中から三角形の黒い尻尾がはみ出てみえるのは………。
まったく、この察しの良さは誰に似たんだか。

「……良くできた娘で嬉しいよ、ほんと」

思わず人差し指でぽりぽりと頭をかきながら。
まるっきり邪気を感じさせない笑顔に「わかった」と頷き返し、ぽんと彼女の頭をなでると、ツァルは少し目を見開いて俺を見上げてきた。
大きな菫色の瞳が、何かを言いたげに悔しそうにゆがんで……。

「どうした?」
「なんでもないです。行ってくるです」

ふいっと顔をそらして。
硬い声で言い放ったツァルの後姿が、静かに閉められた扉の向こう側に消えていった。


彼女の表情は常にはないもので――まるで、泣き出す一歩手前のような顔にみえたのは、俺の気のせいだったんだろうか……?

首をかしげながらも、俺はアイツが寝ているであろう書斎へと足を向けた。














愛娘からの言いつけに従い、ゆるりと部屋のドアを開けると案の定。
布張りのソファーの背にもたれたアサシンが、すぅすぅと小さな寝息をたてていた。
やわらかい紅茶色の髪が午後の陽に透けて、まるで金糸ように輝いて見える。
伸ばされたままの右手の先には、開きかけの書物。
意識をなくす間際でも理性があったのか、しおりを挟んだところで手が止まっている。

……活字中毒のインテリアサってのは、どうかとおもうぞ?

苦笑しながら、手近にあった上着を手に取り。
眠りに落ちているアサシンの意識に障らないように注意しながら、体の上にかけてやろう……としたところで。
思いがけずも、相方の顔を真正面から覗き込むような形になって。

つ……と、手が止まる。

瞳を縁取る伏せた長い睫が、白磁のような肌に落とす影。
軽く結ばれた浅めの唇が妙にツヤツヤと赤く、艶かしくて。

……オイ、寝姿が色っぽいっていうのは、反則じゃないか……?

いや、いつでもどんな時でも、相手の全てが自分にとっては愛しいのだけれど。
普段はなかなか見せてくれない素の表情に、自分の胸の奥がざわりと揺れるのがわかる。
妖しく色づく唇に、視線が吸い寄せられる。

いやしかし。
相手は意識がないし。
いくらなんでも。


……少しぐらいならいいか。(あっさり)


やわらかい紅茶色の髪を指にからめても、起きる気配は微塵もない。
顔を寄せて、アサシンの形の良い唇に熱を落とす。
触れるだけの口付けのつもりが、唇越しに伝わる温度があまりにも気持ちが良くて。

「……ん……」

何度もキスを繰り返し、その時間が長くなるたびに……息苦しくなったのか。
ほんの少し開いたその濡れた唇にするりと己の舌を差し入れ、相手の奥へ奥へと侵入する。

ぴちゃり…と、水音ばかりが耳を打つ。

…………。
…………。
…………。


ぐったりと体重を預けてくる相手の身体を抱きしめて。
思う存分口腔を味わったあとに、ようやく唇を開放して。
熱い吐息を落としながら、俺はゆっくりと口を開いた。


「で、いい加減タヌキ寝入りはもういいんじゃないか?」
「…………おや、気がついてました?」


俺の声に促されるように薄目を開けたアサシンさまは、悪戯っぽく小さく口の端に笑みを浮かべていた。

気がつくもなにも。
いつの間にか回されていた後ろ手で、俺の後頭部をあんだけさわさわつんつんしていれば、どんな馬鹿でもわかるだろう!?

「貴方の髪って、さわり心地がよくって好きなんですよ」

にっこり笑う相方の表情に、思わずそうですかと頷き返しそうになるが。
いや、そうじゃなくってだな。
そこじゃなくってだな。

……くそ、まともに反論するのも馬鹿らしくなってくるな。

「うー……アサシンともあろう者が、あんなに無防備でいいのかよ」

苦し紛れの俺の反論は。
やはり、間髪入れないスピードであっさりと切り返された。
……それも、予想以上のものすごい言葉で。


「貴方以外の人間が私に触れようものならば、速やかに眠りの世界へいざなってさしあげてますよ?」

もちろん、永久(とわ)の眠りへね……と微笑むアサシンの右手には、鋭い光を放つ短剣が一振り。
その切っ先は俺の耳の下。
……すなわち、頚動脈の位置にぴたりと添えられている。
さすが現役暗殺者、いたるところに武器を忍ばせているのか……って、全身凶器なのかお前さまはっ!?


「………ちなみに、俺が何もしなかったらどうしてた?」
「……この状況で手を出さないような甲斐性なしに用はありませんけれど……」
「オイっ!?」

気色ばんだ俺の声に、アサシンはくすくすと鈴を転がすような声で笑い出した。

「すげー…何か毎回お前に酔わされてる気分だ」
「お互い様です」

くすりと笑って、軽く首をかしげて。
今度は相手の方から重ねてきた唇の熱さに、俺はせっせと買出しに出かけているアコライトへ向けてメッセージをとばした。




綺麗な花にはトゲがあるというけれど。
この花のトゲには毒もたっぷり仕込まれているらしい。

一生解けることのない、痺れるような甘い毒が。








end


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