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[SS-RO] プリプリ

タイトルだけみるとえらいギャグですがシリアスです。
どこかうっそうとした暗いお話です。

ろもえろから発掘してきました。
前のサイトにはうpし忘れていたようだ。
3年前の某ぷりすきー様への誕生日用ご進物でしたw

だからプレゼントにこんな暗い話ってどうよという……( ´・ω・)


■いちばん遠い空の下



「なあ……どこ見てるんだ?」


淡雪かと見まがうくらい。
はらりと静かに舞い散る桜のひとひら。
日暮れの薄闇にとける、低く乾いた自分の言葉。
自分を見つめる、ガラス玉のようにうつろな二つの瞳。

――この瞳を知っている。

この身は現にあるくせに、核たる芯がうつろい歩き。
常世の甘い言葉に誘われてゆく。
ここにあるのに、ここにない。
ただある景色を写し取るだけのその虚無は……死せる者に魅入られた器の証。

さらりと頬を撫でゆく風が、体の芯をふるりと揺らした。
春先とはいえ、少し影の落ちる暮れ時の空気はしんと肌をつき刺す冷たさを残している。
無意識に伸ばした両の手で、白くなるほどに己の腕をかき抱いたのは……果たして現の世界で与えられた感覚なのか。

「なぁ……寒くないか?」

低く、唸るようにこぼれた自分の問いに、応える声などありはない。
自分の目の前に在るのは、まばたきすらも忘れたただの人形。
ただただ――からくり仕掛けのように、静かな息を繰り返すばかりの聖職者。
満開の桜のようなほの淡い紅色の髪が、薄闇に解けてゆく。


まるで、もとから、生きてなどいなかったかのように――。



エクソシスト――迷える魂を救い導く指標となるべく生まれ出でた、現と幻の仲介者。
死者の怨嗟の声を聞くたびに心を痛め。
死霊の凝りを浄化するたびに自らの魂を代償としていたくせに。
「闇に属するこの力が、次への道しるべになるのならそれでいい」……と。
見ているほうが苦しくなるほどに、透き通る笑みを浮かべていたお前。


 決して、納得していたわけではなかった。
 命を縮める行為に他ならないというのに、どうして心からの賛同などできようものか。
 だが……けれど、頑なに死せるものを悼む相手の真っ直ぐな瞳に負けて。
 せめて、相手の体への負担を減らす手助けをくらいはしてやろうと思っていたのだ。


 それなのに。




「なぁ……ミイラ取りがミイラなんてさ。笑えない冗談だろ……?」






痛む思いを抱えているのは、誰もみんな一緒だと。

  そう言ったのはお前。

傷む想いを捨て去りたいのは、自分の弱さが許せないからだと。

  そう言ったのは自分。

悼む心に背を向けて、生み膿む魂をひきずり歩く。


「なぁ……」


なぁ。
なぁ。
……なあ。



――俺も、そっちに行けばよかったのか?


手を伸ばせば触れられる距離にあるというのに。
まもりたかったはずの相手は、闇の中に魅入られ、囚われた。



傷む、心を。

悼む、心に。



何より欲する彼方の心は、暗く昏い虚無の果て。




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