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[SS-SW] セカンドウォーズ

夏希→→健二←←←佳主馬

で、さわやかな健二さん取り愛話しです。
あらわし落下直後の夏休みの続き。

渦中の人のセリフがまったくないっていう。
■セカンドウォーズ


何日も同じ家で一緒に過ごしていれば、自然と分かってくることがある。

パーティグッズ満載の大荷物は持てたくせに、慣れない田舎道ではスイカ一玉の重みでよろけ、道端の石につまづき、見事に転んで真っ二つに割ってくれたり。チビっ子たちの鬼ごっこ要員に借り出されて、容赦のないお日様に照らされ、秒殺で日射病になりかけたり。
どっちかっていうと、ひょろっこくて情けない感じの風体で。口にする言葉は後ろ向きで不安定で、確信できることなんてなかなか言わない。だけど。

……逃げ出さないんだよ……ね。

「分からない」「出来ないかもしれない」と口にしながらも、彼は決してあきらめない。求めているものに届かないかもしれないけれど、届くように努力する。
圧倒的な力を前に、心が折れてしまってもおかしくない状況にまで追い詰められても、答えを見つけ出そうとする。

……それが、どんなにすごいことなのか。

不安と緊張と絶望と期待を、ごちゃまぜにしたような瞬間を一緒に過ごしたからこそわかった。その感覚は、爆風とともに心の中に直接刻み込まれたのだ。
なんて、彼の本当の強さにてんで気がついていなかった自分が言えることじゃないって、わかってる。
正直に言えば、ちょっと頼りない雰囲気も年下と思えば気にならないし、頼みごとをしやすい後輩かな、という認識でしかなかったのだ。自分自身、色恋沙汰には疎い方……というか、正直無頓着だったから。
どっちかというと男っぽくてサバサバしすぎている性格のせいか、女友達から「夏希はモテるね」なんてからかい気味にいわれても、男友達の方だって気取らないで話ができるからだろうなってくらいにしか思えない。
自分が、人と話をするのは好きだし、率先して動くのも大好きだったから。だから、バイトを思いついたのもほんと気軽な気持ちでだから、平気で人を巻き込むようなこともできた。
……いくら大おばあちゃんを喜ばせようと自分では必死だったとはいえ、今思うとなんて失礼なことをしたんだろうと、頭を抱えたくなる。

   ごめんなさい!

偽りの婚約者の真似事までさせてしまった、被害者ともいえる彼をこっそり呼び出して。自分の中では誠心誠意、精一杯謝罪の言葉を口にしたのは、事件のあった翌日のこと。
いくら自分が楽観的な性格とはいえ、こんなことで許されると思ってるほどご都合主義ではなかったけれど。

   あ、あの……顔、上げてください。僕、別に怒ってないですし……というか、うん、あの。夏希先輩には感謝しています。

穏やかな声につられるように顔を上げると、まるで包み込むように散らされた満面のやわらかい笑顔に、どきりと胸が騒いだ。

   ここに連れてきてくださって、ありがとうございます。

それに、先輩は僕のこと応援してくれましたよね、うれしかったです……と、本当に心の底から嬉しそうに。ちょっと照れながら横向きで微笑む彼の姿に、夏の日差しのせいじゃなく、くらくらと眩暈がする。
目を細めて、幸せそうに笑う彼の横顔。
それは、あの日の大おばあちゃんの誕生日会で、弔問客を尻目に盛り上がっているみんなを、一歩下がって眺めている時にそっくりで。
穏やかな笑顔で「見守っている」としか言いようがない彼の小磯健二という人のやさしさに、なんだか自分も嬉しくなってきてしまって仕方がなかった。
どんな無茶だと思えることでも、一生懸命に向き合ってくれようとしているってこと。
大切な人たちと大切な場所を、このひとは守り通してくれたんだっていうこと。
……たぶん、自分の中で確かな好意が芽生えたのは、この瞬間だと思う。
というか、「大好きです」の一言に嬉しくなって頬にキスというのはやりすぎてしまったかもしれない……みんなが見てたのに、勢いって本当に恐ろしい。
恥ずかしすぎて、思い出すだけで顔から火が出そうっていうのはこのことかと……かーっと熱くなってきた頬に慌ててぱたぱたと手扇ぎをする。

誰も見てない……よね?

そっとまわりをうかがってみても、人の気配はない。ほう、と息をつく。よかった、今日は家の中に人が少なくて。
ミーンミーンとうるさいくらいのセミの声が私の耳をつんざく。時刻は午後を少し回ったくらい。
一日で一番暑気がもわっと高くなるこの時間。元気の有り余った年少の子どもたちは、背後に迫った夏休みの自由研究に追われて山の中へ突入。夏期休暇を終えて通常の仕事に追われて帰っていった人たちをのぞき、ヒマになってしまった男性陣は女性陣の「お買い物」に付き合わされて街へと出ている。
つまりは、今この広い屋敷内には、片手で足りるくらいの人数しかいないということで、滅多にないチャンスなのだ。

気がつけば、夏休みも残り五日。あらわし直下の怒涛の日から今日まで、気がつけばあっという間だった。
一躍世界のことに陣内家の英雄格になった彼を奪い合って(親戚の誰の頼みも笑顔で引き受けてしまう健二くんは文字通りの争奪戦の商品)、笑いながら一日一日が飛ぶようにすぎて。
OZの混乱が落ち着くまで……なんて名目で上田への滞在を引き伸ばしていたけれど、さすがに休み内に一度くらいは部活に顔を出さなければならないし、健二くんだって遊んでばかりはいられない……と、こっそり私にだけ言ってくれた。
名残惜しいけれど、もう明日には東京に帰るのだ。
その前に。
やり残したことを達成しなければ……と決意をこめて、私は目的の人物を探して、板張りの廊下をぺたぺたと音をたてて歩く。はだしの足裏から伝わる板の感触がひんやりとして気持ち良い。

そういえば、と。

すっかり爆風の後片付けの済んだ広間に突き当たったところで、事件直後のヒーローの健二くんの様子を思い出して、思わず声を出してふふっと笑ってしまった。あれとかこれとかそれのせいで、鼻血を出しすぎて倒れちゃって。
真夏に靴下なんかはいてるからのぼせたんだ……なんて、万助さんに呆れられてたなぁ……と、思い巡らせていると。まるであの日を再現したかのような光景が目の前に広がっていて、私は思わず足を止める。
ちりーん。
涼やかな風鈴の音。暑いけれど、こもりがちな空気を払うかのようにふわりと抜けた風に、視線の先の少年の黒髪がさらりと揺れた。
柱にもたれて、片膝ついて。
ゆるりと伸ばした左手だけで、傍らで昼寝している……と思われる青年の髪を緩慢な仕草で梳いている。

「佳主馬……」

なんの感情も映さない無表情で冷たい瞳。
髪を絡ませて、ゆるりとなでる指先だけが、ひどくやさしい。

「……問題、解けたんだって。OZの数学コミュで見つけたやつ。ずっと計算式書きなぐって、とけたって叫んで打ち込んで。そのまま、バッタリ気を失っちゃった」

名前を呼んでも顔も上げずに、淡々と事実だけを羅列した声が静かに響く。

「………また夢中になっちゃったのね。ほんと数字のどこがいいんだろう? あたしたちはそれに救われたんだけど、なんか焼きもちやいちゃいたくなるって変かなぁ」
「普通じゃない? 気持ち、分かるし」
「佳主馬はその問題見てなかったんだ」
「一緒にいたけどね。定員制の鍵つきチャットだったから、僕は入れなかったんだ」

ていいんせい? かぎつき??
と繰り返したら、人数制限があるパスワードがかかってるチャットルームのことだよと簡潔に教えてくれた。
つまり用のないヤツはくるなってことらしい。

「へー……ま、いっか。用があるの、健二くんじゃないし」
「僕?」

初めて相手が私の声に反応して顔を上げた。

「うん、佳主馬に」

こくりと頷きながら、打ち上げられたマグロになっている健二くんをまたいで反対側に着地。ちゃんと互いの顔が見える位置で、ぺたりと膝を落として座り込んだ。
自分は、戦局を読むのは苦手、人の顔色を伺うなんていうのも得手ではない。でも度胸だけは「あんたは私が若い頃にそっくりだからね」と楽しそうに笑って頭をなでてくれた、大好きな栄大おばぁちゃんの折り紙付きだ。
だから、先手必勝と心の中で気合を入れて口を開いた。

「宣戦布告に来たの」
「………は?」

ポカンと口をあけてこちらを見ているなんて間抜けな姿、いっつも世間様を斜めに見ているような無愛想すぎる表情がデフォルトの少年に限って、なかなか見られるものではない。
やった、と内心で拍手喝さい。やっぱり勝負は不意打ちに限る。

「だ、か、ら。開戦宣言よ。健二くんは渡さないんだから」
「何をっていうか、いまさら? この連日どんだけ争ってきたかわかってる? って、ほんとに夏希姉どうしたの。暑さで少ない脳みそとけきったとか」
「ちょっと何気に失礼なこと言ってんじゃないわよ。義務教育も終わってないお子様のくせに!」
「そのお子様相手になに熱くなってんの」
「っ! だ、だって! ……だって佳主馬……本気でしょ? 健二くんのこと」

真っ直ぐに問いかければ、冷たいだけだった深い漆黒の瞳に、ほんのわずかに動揺が走るのが見えた。
そんな自分に気がついたのだろう、一瞬息をのんで、ぱっと視線をそらす。

……あーやっぱり否定はしないんだ。

私は小さく息を吐いた。滅多に他人に懐かない子が、いつもくっついているなんて珍しいなって思っていた。
彼と一緒にいる時とか、次の予定を立てていたりとか、ことごとく邪魔しにきてくれるし、当たり前のようにいつの間にか割り込んでくるし。
でも全力で守ってくれたあんな姿をみせられたら、(現に一族みんながもう当たり前のように健二君を家族として受け入れていたし)尊敬するのだって気に入るのだって自然だと思ってた。でも違う。これは違う。少なくとも、ただの十三歳の子どもが持ちえる瞳じゃない。
一緒にいる時間が多くなったからこそ、同じ人を追いかけていたからこそ、気がつかないでいることなんて出来なかった。彼をみる、その眼が全てを語っている。
無表情なくせに、冷たい態度をとるくせに唇の端で小さく笑んで、彼の姿を焼き付けている。目は口ほどにものを言うって、ホントことだったんだって、理解するしかなかった。
本当に、彼は、彼を、手に入れたいと、臨んでいる。

「……健二くんね……いつも家では一人なんだって」

はじかれた様に顔を上げ、逸らされていた視線が私に注がれる。

「あ、私だけが知ってるって話じゃないから、安心していいよ」
「……別に、安心とか」
「ふふ、ちょっとすねたでしょ? 佳主馬、健二くんが翔太兄に捕まった時、いなかったから知らなかっただろうけどそのときね、健二くんが栄おばあちゃんに言ったの。お父さんが単身赴任で、お母さんも仕事が忙しくって、家ではいっつも一人だったって。だから、大勢で食べるご飯とか賑やかなのが……嬉しかったって……。あたしね、それ聞いて自分が嫌になっちゃった。ホントにそう思ったのは後からなんだけどね、勝手に引きずり出して、嫌な思いとかいっぱいさせちゃったのに、でも嬉しいとか言ってくれて、守ってくれて……あたし、何やってるんだろって」

だから…と、続けた自分の声は、みっともないくらいに震えてたと思う。

「だから。ちゃんと、今度はちゃんと嬉しいって笑ってくれたらなって思ってる。……そうできるように、したいと思う」

恋とか愛とかはっきりした言葉にはできないけど、好意があるのは本当。この芽がどんな風に育つのかはわからない。わからないけど、一緒にいるのが自分で在りたいと願う。
だからこそ、同じような目で彼をみる相手には、正々堂々と勝負を挑まなければと決意したのだ。たとえ「私のほうが好き」「僕の方が好き」と毎日遠慮もなく叫びまくり、「は? え? ええ??」と意味不明の言葉を繰り返させるほどに挟まれた当事者を混乱の渦に叩き落とし、周囲が「恥じらいってもんがないのかお前らは」とあきれ果てている状態だとしても……。

「……ほんとにさ、卑怯だよね」

ぽつりと落とされた言葉に、はっと我にかえる。

「ずるいんだよ、このひと。ほんと。わけわかんない。すぐに自分を卑下するような言葉を口にするくせに、いきなり強気になるし。弱いのかと思えば負けないとか無謀なこと口にして、むちゃくちゃなことしてるのに全然折れないし……どれほど魅せつけたのか知りもしない、分かろうともしないし……」

乾いた声なのに、ひどく熱っぽく。

「もっと自信を持ったっていいんだって、分からせてあげたいのに……強いくせに、脆くて。見ていてなんとなく、一人にしたくないって、思った」

口元が苦しげに歪んで。
静かな声と反比例するかのように伝わってきた、彼の大きな感情の揺れに耐えれるよう、私は大きく息を吸い込んだ。

「ほんき…ね、貴方」

囁くように繰り返した私声に応えるように。佳主馬は、今度はしっかりと目を合わせてよこした。

「本気じゃなきゃ、ここにいない」

交わす視線の強さ、言い切る言葉の潔さに、私は……自然と、小さく笑んでいた。だって、ここにいるのは、初めての恋に翻ろうされる一人の少年で見知った親戚の男の子で、どういう因果か恋敵。

「散々言わせといて……何がおかしいの」
「ごめん、馬鹿にしてるわけじゃないよ? ただ、佳主馬がこんなにおしゃべりなのって珍しいなぁって」

無口で負けず嫌いで、OZのマーシャルアーツのチャンピオンっていうこともあってか、勝気で強気で尊大な又従兄弟の男の子。
昔っから無愛想で生意気だけど、けっして人嫌いってわけじゃなくて、小さい子どもたちの面倒はよく見るし、手が空けば大人たちの手伝いだってちゃんとする。騒々しいのとか他人に合わせたり自分のペースを乱されるのが嫌なだけで、どっちかっていうと信頼できる相手には甘い方なんじゃなんじゃないかと思うけど、それでも積極的にみんなでワイワイやっている輪の中に入ってくるようなタイプではない。
冷たいわけじゃない。けど、必要最低限の関わりで済まそうとするのがいつもの彼のはず……だけど。そうやってると年相応みたいで可愛い、と。思ったままの言葉を口にすると、

「………っ!」

なぜか相手はかっと頬に朱を走らせて目をそらせた。

「………かずま?」

珍しいことは重なるらしい。
ぽっかりと口をあけてじーっと見つめてると、ぼそぼそと小さな声が聞こえる。

「……いいよ、笑って。自分でもおかしいと思うんだから」

不安なんだよ。
と、さらに小さく、ため息と共につなげられた言葉に目を剥いてしまったのは仕方がないと思う。

「分かってる、つもり。同性だってことで既に十分すぎるくらいだっていうのに、どうしようもできない年齢差とか住んでる距離とか、不利な要素だらけ。言ったってしょうがない。分かってもらえるはずがない。何かがうまれるより先に、壊れるだけだって頭では理解してるだけど、何かを言葉にしないと、しておかないと……熱に浮かされて、口走ってしまいそうで怖いんだよっ」

私たちの間にとつとつと落ちる静かな声。ようやく耳に届くくらいの小さな声音なのに、まるで叫んでいるように私には聞こえた。
はあ、と自分を落ち着かせるように深い息をつき、顔を上げた彼はもういつものつんと澄ました表情で。一瞬さっきのは見間違いだったのかと思えるほど。

「健二さんが悲しんでるとこなんて、見たくないし。あと……ほんと笑っちゃうけど、僕は夏希姉を不幸にしたいわけでもない」

きっぱりと言い切った強い口調に、私は返すべき言葉を見失ってしまう。彼に向けるような想いではないけれど、親族として自分のことを好きだからと。そう言ってくれた佳主馬の言葉に、じんと胸の奥が熱く……。


あったかく……ん?
んん?
あれぇ~~???

自分だって一族みんなが大好きだという気持ちは痛いほど分かるし、彼のこともちゃんと親戚として好きだ。
だから心に沁みてきた……のだけれど、よーく今の言葉を咀嚼してみる。

「……ねぇ、佳主馬。うっかり感動しかけちゃったんだけど……なんであたしが敗北決定なわけ?」
「へぇ……割と鈍くなかったね、すごい」
「ちょっと!」
「負ける戦はしない主義だし? そっちが勝負仕掛けるつもりなら、勝つよ」
「あ、あたしだってそのつもり! っていうか、不利だって言ってたのあんた自身じゃないのっ」
「うんそうだね」

不遜な瞳にきらりと走る鋭い光。

「僕を誰だと思ってんの?」
そこにあるのは、闘う事を知っている勝つことの意味を知っている、紛れもない王者の笑み。
こいつは~~~~~~~っ!!!!!
そこへなおれ! ……と叫びそうになったその横で。

「……ん…………」

身じろぐ音と、ぱたりと寝返りを打つ音が同時に響いて、私はあわてて両手で口元を覆う。

「…………涎、出てる。みっともないよね」
「…………ほーんと、だらしないわよねぇ」

起こしてしまったかと慌てた互いの視線の下には、すーと寝息を立てながら幸せそうに眠りをむさぼる戦利品(予定)の姿。自分のほうが彼氏有力候補の相手より年上とはいえ、ほんの一歳差なんてあってなきがごとし。大体こちらは紛うことなきか弱い女性で、相手はいささか線が細いとはいえれっきとした男性であるのに可愛い、とか思ってしまうのはどうしたことか。
そろりと手を伸ばして、佳主馬と同じようにそっと頭を撫でてみる。

あ、結構やわらかい。これはクセになりそう。

手のひらの下にいるのは、誰にも真似できない本当の強さで、世界を救っちゃった私たちのヒーロー。どんなにありがとうって言っても、一緒にいて欲しいって伝えても、自分にはそんな価値などないって思い込んでる頑固で不器用でやさしすぎる人。
もっともっと自然に、自分たちのそばにいてくれればいいのに。

「はい提案。抜け駆け禁止」
「それ、本気で言ってる?」
「もちろん。……五十%くらいだけど」
「自分のことぐらい把握しなよ。夏希姉、できないこと口にしてると信用無くすよ」
「ちょ! なっまいきー!!! 挑戦状たたきつけてもちっとも動じないし」
「十分驚いてるよ」
「どこがよ」
「強敵ってことには変わりないし。まぁ、現状を理解しとかないとね。戦局が見えなきゃ攻略も見えてこないし。焦りはするけど、欲しいって駄々こねるだけじゃ、ただのガキのないもの強請りだし、困らせたくないしね。弱みに付け込むのは簡単だけど、頼って欲しいのに心を見失わせるなんてそれこそ本末転倒でしょ」
「……あんたほんとに中学生?」
「残念ながら」

肩をすくめながら、とんでもないことをさらりといってくれる。
……まぁ、悔しいけど、言ってることは……大体分かる。
ほーっと息をついて、無愛想極まりない相手に向かって私はにっこりと笑いかける。

「ね、佳主馬。約束しよ」

幸せにするって。
誰が、とか。誰を、とか。そんな言葉は必要なく。
交差した視線の先で、ふっと笑いあった。






笑ってくれたらそれでいい。
さみしい思いなんて、させたくない。






終わり


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