刀剣乱舞:ある日のサニーさん2

※腐れ要素をほのめかすくだりがあります。苦手な方はやめといてください。

なんでもおっけー

な方は追記からどぞー。






「骨喰さんは告白魔なのかなと」
「はい?」
演練見物で何かあったのかとゆるりと問う相手に、「思うところというか、気になったことなんだが」と素直に心情を述べたら、ひじょーに怪訝な顔をされた。
(おや、目がまんまるになっている。名前のごとく月のようではないか)
常時のほほんとした微笑みを絶やさない彼としては至極珍しい表情に、こちらの方が笑みを誘われる。
(これは稀なる事案として、あとで審神者必帯観察日誌に書き残さなければなるまい)
審神者たるもの、刀剣の現し身である彼らのありとあらゆる事象に注視すべし。
万が一自身に何事か起こった時や、ぽんと肩を叩かれ窓辺に連行された時のために、次の刀剣マニア……違った、真の収集オタク審神者へ速やかに引継ぎをしなけらばならないのだ。
(あの課は変人以外みたことがないからな)
自分を上げる棚は果てし無く広いのがお約束である。
いかなるへんた…ちょっと世間ずれしている者か着任しようとも、即座に対応できるような虎の巻(マニュアル)を編纂しておかなければならない。
(重要な任務の一環なんだ)
なるべく主観は削ぎ、感情的にならないよう自動書記のように記すべきものである。
「兼定は生のトマトが苦手。必ず湯剥きをしたあとタネを除いて火を通すべし…って、子育て日記ですかこれは」
「はっ、 燭台さんいつの間に」
情など不要! 無になれ自分! クールジャパン!! と念じていたら、本当に無意識下で記録をつけようとしていたらしい。すっと背後をとられ、頭を抑えられ、己の左手に装備していたはずの大切な日誌をひょいと取り上げられていた。
「あ、こら。一応秘匿書類だぞ、読むでない」
「能面みたいな顔して何を愉快なことを書いてるんだい君は。あ、僕の項もあるんだ。えーと――物事を万事そつ無くこなし、所作は細やかといえる。常において対する相手へ気を配ることも忘れず、心意気を体現したような大胆優美な動きはまさにCCPとして十分な存在感を与える……これは、言葉にされるとなかなかにくるものがあるなぁ。でも、このCCPってなにかな?」
「クオリティ、カット、プライオリティの略だよ」
「そうなんだ」
これっぽっちも思ってやしなかった言葉が、淀みなくつるっと滑り出た。
「金剛石に連なる評価ってのはまた嬉しいもんだね」
「……うむ」
同意のそぶりで軽く頷き返してなんかしてしまっているあたり、心臓に毛が生えている鶴さんが乗り移ったに違いない。
そうに違いない。そうしておこう。
(まぁ、いいか)
心なしか嬉しそうな顔で燭台さんがを日誌を戻してくれたので、ほんの少しだけ浮かんだ罪悪感はまるっと鶴さんに押し付けた。
次に同じような危機的状態になった時にうまくいくとは限らない。敵は内にありとはまさにこのこと、危ない危ない。
審神者とは彼らの核たる魂を見出し、彼らの刀身が語る言葉を導く者。心を乱さぬよう、もっと気を引き締めなければなるまい。
「……で、何の話だったかな」
「骨喰になにやら思うところがあるようだったが」
「ああ、そうであったね。月さんに教えられるとは私も耄碌したものだ」
「確かに俺はおじいちゃんですけどね」
一言多いと苦笑しながらこぼす相手に、すまんと軽く笑んで返す。
「あの子がな、手合いの最中だというのに『好きだ好きだ』と相手方に向かってめくら滅法叫んでおったのでな。よっぽどやんごとない事情とやらが切迫していたのかと……」
好ましく健やかな佳い男とはつまり、しごく真っ当な欲求を持った大人の男だということである。
「すまんな、性的欲望の発露と下半身事情までは考えが及ばなかった。色事にはとんと無縁な身であったのが仇となったらしい。これでも、いらぬ我慢を強いてしまったのかと悔いているのだよ。至らぬ主で本当に面目ない」
「うわーっ……なんていうか、多大なる誤解の上に成り立った斜め上過ぎる見解というか……。それ、絶対本人に言わないでよね」
呻きながら釘を差した燭台さんが、頭を抱えて崩れ落ちてしまった。
(はて、彼にも言えぬ悩みがあったのだろうか)
蹲る相手を前に軽く首をかしげていると、ふふっと静かな笑い声が耳を打った。
「あなたには、嫌悪感というものがないんだな」
穏やかに語りかけてくる相手を見上げ、ひたりと視線を合わせる。
月さんの台詞に主たる語句はなかったが、何のことを指しているのかは不思議と知れた。
「そんなもん個々の自由だろう。若色(男色)が常だった時代に、私の常識を持ち出してきてもまったく意味がない。別に君たちが誰と睦み合おうがイチャつこうが乳繰り合おうが閨でギシギシあんあんニャンヤン抜き差し輸送しようが一向に構わないよ」
だがなー―ふっと言葉を切り、意図的に声に芯を込めて、眦を鋭く相手を見据える。
「短刀には手出しならんぞ」
「……」
「稚児灌頂は認めん」
「…………」
「おーい。月さん、聞こえているのだろう? 耳が遠くなったフリはおよしなさい」
こんな時だけ老人振るとは見苦しい――と呟けば、泰然とした様は崩さないくせに、ほんのちょっとだけ視線を逸しやがってくださいました。
やましいことがあると言っているようなものではないか。
「……俺なんて可愛い方なのに。鶴丸なんかは、昔から入れ食い状態だったぞ」
「ほう? 鶴さんは大食漢、っと。なるほどね……搾り甲斐があるというものではないか。ふふっ、少しこれからの編成をより綿密に練らねばならんようだな」
くつくつと楽しげに喉を鳴らせば、食えない爺さまが先ほどのぼやきなどなかったかのように、
「可哀想になぁ」
などとほざいておられる。
何を他人ごとのような顔をしているのかな。

「言っとくけど、月さんも遠征組みだからね」



いってらっしゃい、奥州(二十四時間マラソン)へ。








(おまけ)
「ところで。骨喰くんのあれ、『突きだ!』だから」
「…………おおぅ」

日誌に秘匿事項が増えました。

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