[SW] シミュレーション 2

「……で、僕が帰ってくるまでその状態だったわけ?」

枕に顔を埋め、うつぶせになったまま硬直している俺の頭に、冷たい声が降ってくる。
ハイソウデス……と、枕に向かって小さく声を落とすと、はぁーと遠慮のないため息が聞こえてきた。
「一応聞いとくけど、何でまたそんなことしてたの?」
当然湧いてくるであろう相手の疑問の言葉が、身動きの取れない俺に追い討ちをかける。
何とか負傷部分に負担をかけまいと仰向けからうつぶせになったものの、それ以上は全く動くことが適わなくなり、証拠隠滅を果たせなかった。当然ながら彼は 疑問を持ちかけてくるだろう。
こうなっては仕方がないと腹をくくることにした。ただひたすら、戦々恐々と相手の帰りを待っていただけではなく、ちゃんと状況説明(という名の言い訳)を 編み出していたのだ。
「いつもの訓練のひとつ。腹筋を鍛える新しいプログラムで——」
「ベットの上で?」
「……ちょっとだるかったし、起き上がるのもめんどくさくなって」
「でもキッチンまで米袋を取りに行ったんだ?」
「……………」
繰り返すようだが、決して彼は状況分析能力が低いわけではない。
破壊的に色事に関してのみ察しが悪すぎるだけで——多分あんまり関心がないだけなのだろう——むしろ、ここぞというときには、余計と思えるほどの情報分析 能力を発揮してくださる。

『米一俵(普通の米袋×二)=約六十キロ=成人男子の標準体重』

「それ、使って。何してたの?」
微笑んでいるような気はする。口調はやわらかい。が、絶対に目は笑っていない。視線は上げられないけれど、断言できる……できてしまう。言い逃れはできな いと観念して、ゆっくりと重い口を開いた。
「……乗ってくれる想定で練習をして、ギックリ腰になりました……」
「…………………………」
痛すぎる沈黙。
たっぷり二分以上は経過した後に、はぁ……と沈んだため息が吐き出された。

「佳主馬くんて、ほんと馬鹿」

そんなアナタが可愛いの!——なんて甘い言葉が続いてくれるはずもなく。心底あきれ返った白い視線が後頭部に突き刺さるのを感じる。
痛い。腰も痛いけれど胸も泣ける程に痛い。
氷水と換えの湿布持ってくるから、大人しくしてるんだよ……という言葉が遠く意識の外で聞こえたような気がしたが、「馬鹿バカばか馬鹿バカ……」と最後通 告のような無表情の声が耳の奥でエンドレスリフレインしていた俺は、何も返すことができなかった。
確かに馬鹿なことをしたとは思うけれど、俺は俺なりにこう必死な思いというか何というか、いや強いるつもりなんて微塵もなかった……というのは嘘になるけ ど、でも決して欲望にまみれてばかりというわけでは……。
「だいたいね、ちゃんと言ってくれれば、僕だってそれくらいするのに」
だから無理やりなんて——は?
いま、なんて、おっしゃいました……?
「ちょっ、ちょっと健二さん、それほんとにっ!」
「あ、佳主馬くん駄目だってば———あーあ……」
安静にしてなきゃって僕言ったよね、ちゃんと聞いてた? ……なんて言葉は、体の中間地点から発生した、全身を駆け巡る爆雷のような激痛によって阻害され る。


 ぐきょ


本日二度目のキング終了のお知らせが静かに反響した(合掌)。

comment

管理者にだけ表示を許可する

10 | 2017/11 | 12
Su Mo Tu We Th Fr Sa
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -
New
Category
Archive
Link