【SS】【Ib】

キスのお作法 さんに聞いてみたら

【 たろのイヴギャリ の キスのお作法 】 顔を近づける
→ 見つめあう → じっと相手を見る
→ キスをする → 自白する
→ 逆転敗訴

なにそれ素敵


ということでやってみました。
どうしてこうなった。

ついったで流してたのをまとめただけですー。
あ、ED後未来ねつ造ですが年の頃は、はてさて。


ということでネタばれありなので下に収納。




そろりとほほにふれてきた指先が、ほのかにあたたかい。

「ほんとにだいじょうぶ?」

気遣わしげにかけられたか細い声に大丈夫と返すけれど、たぶん相手は納得していない。
ソファーに沈み込んだ私をのぞきこむやわらかな瞳は、少しばかり不安に揺れていた。

ああ、こんな顔をさせたいわけじゃないのに。

本当に大したことではない。
天気がご機嫌斜めな日などに、気圧につられて体がだるくなるだけなのだ。
「少し休んでいれば回復するから」とか付け足してはみるけれど、我ながら覇気がないのが情けない。
せっかく二人きりでいられる大切な時間だというのに。
文句を言うにも自然現象相手では喧嘩の売りようがないし、勝ち目もない。

そういえば同僚に人間百葉箱などと呼ばれたことがあるなぁ、なんてとりとめのないことが浮かんでくる。
人の頭をみて今日のワカメは萎れているなとか、失礼千万なことをいい放ってくれたのだ。
いつもなら思い出してムカムカするところだが、どうやら本当に弱っているらしい。
だからだろう。

だから、こたえを間違った。

ほほに添えられていた指が髪にふれて。
遠慮がちに頭を撫でてくる小さな手が愛しくて。

「何かできること、ある?」

と問う幼い声に。

「じゃあ、キスして」

などと、とんでもない言葉がぽろりとこぼれ落ちたのは。


更に情けないことに、その瞬間、自分が何を口走ったのか全く気がついていなかった。
頭を撫でていた手がぴたり止まる。
訝しく思い視線を上げると、不思議そうに自分を見つめる瞳とぶちかった。
思いきりの良い子の珍しく思案気でまっすぐな眼差しに、寸前の記憶がコマ送りでよみがえる。

(まって、アタシは一体何を……?)

はっと息を飲んで、悔やんでみてもいまさらだ。
でもせめて何かフォローをと口を開きかけて、近づいてくる影に気がつき、止まる。
少女の瞳に浮かぶ宝石のように煌めく光に目を奪われて、瞬きすら忘れて見つめ続けて。

ちゅっ

部屋に響いた軽いリップノイズ。











[Ver.A]

片頬に手をあてて呆然としている私に向かい、彼女はこくりと首を傾げた。

「大丈夫? 痛くない?」

ちゃんと遠くにとんでった? ——言葉を続ける相手に私はカクカクとぎこちなく首をふる。

「とんだような、もっと大事な何かがぶっとんだような…半分くらいかしら」

何を言いたいのか自分でもわからない。
正直、超低空飛行だった体調はものの見事に上昇気流にのっかっていたのだが、顔にふれたやわらかい感触が強烈すぎて脳みそがパニック状態になっている。
仕方がない、昔から突発的な事態には弱いのだ。

「半分は、だめ」

呟く細い声とともに、押さえた手の反対側からもう一度軽やかなノイズ。
見上げたその先で、少女がにっこりと微笑んだ。

「お母さんのおまじないとってもよく効くの。ギャリーの痛いの、私が全部治してあげる」

だから無理しないでと必死に言募る相手の言葉に、ぐらりと視界が揺らぐ。

「アタシ、もうだめかも……」
「ギャリー!?」

こぼれ出たのは本気の本音。
笑顔を見ていたいのに。
悲しませたくなんかないのに。
この手のぬくもりがずっと側にいてくれくれるのならば、世話を焼かれるのも悪くないなんて思ってしまう、どうしようもない自分がいることに気が付いてしまった。

(もう、一生お天気に負けたままでいいかも)

——不治の病につける薬はない。



end













[Ver.B]

片頬に手をあてて呆然としている私に向かい、彼女はこくりと首を傾げた。

「大丈夫? 痛くない?」

ちゃんと遠くにとんでった? と。
どこまでも相手を思いやる純粋すぎる眼差しに、胸の奥で何かがうごめくのがわかった。
頭がどんよりと重く、神経に針が突き刺さったようにズキリと痛む。
どうしようもなく、苛立たしい。何に対して? もちろん、目の前の少女に対して。

「アリガト……でもね」

うっすらと笑って、私は彼女に手を伸ばした。

「あなた、ちょっと無防備すぎるのよ」

目を見張った相手の腕をわざとキツく握りしめる。
ぐいっと引き寄せた勢いで体を反転させると、彼女の華奢な体をソファーへ組み伏せた。

「おせっかいゴッコもいいけど、アタシは貴方の家族じゃないわ。他人よ。オトコよ。ちゃんとわかってる?」

言葉もなく私を見つめ続ける視線に曝されて、私の中のうす暗い感情が煽られた。

「信用するとね、こんな目にあうのよ」

体温がふれる寸前。
お互いの息はもう、混じり合っている。
けれど、彼女は瞳を決して逸らさない。

「ほんとにイヴはお利口さんね。……なんて、言うと思う? 逃げなさいよ……っ」

空気を介さずとも伝わるような距離で落とした囁きに、彼女はくしゃりと顔を歪めた。

「だって……ギャリー、泣きそうだもの」
「は? あんた何言って……」

言いかけた言葉の続きが、口腔で凍る。
少女の双眸に映された男の顔は、ほんとうに、泣き出しそうな、心細そうな、ひどく無様で滑稽なもので。
つきつけられた真実に、すうっと芯が冷えた。

「やだわ、何やってんのかしら」

はぁと息をついて、ごめんさいねと呟きながら拘束していた手をはなす。
(優しさが自分だけに向けられたものではないなんて、当たり前の事じゃない)
わかっているはずなのに、無性に、腹が立ってしまったのだ。ああ、だから天気の悪い日は嫌だ。
現実逃避の自己嫌悪でがくりとつっぷした私の背中を、そろりとなでる感触がする。怖い目にあったばかりだというのに、解放された手を伸ばして、懸命に介抱しようとしているのだ。

「あのね、大丈夫」
「……何が?」
「ギャリーだけだから」
「だから何が」
「ずっと、ずーっと私がギャリーを守ってあげるから」
「それ……嬉しいけど、ちょっと何かズレてない? ——ぎゃっ」

妙な声が漏れたのは、疑問符になった私などお構いなしに彼女が力一杯抱きついてきたからだ。

「だから、安心していろんなギャリーを見せてくれていいんだよ」

晴れやかな全開の笑みが男前すぎるのは気のせいなのか。
もしかして、逃げられないのは自分の方かもしれないという予感がチラリとかすめたけれど。

(まぁ、それでもいいかもね) 


end

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