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[SS-RO] まーくんとスナの物語 2

ある意味寸止めちっく。
なんでこんなに心温まる(?)物語になったのか……

■reserve … 2




か弱いはずの水色の髪の女性に問答無用で引きずられながら、羞恥プレイのままフェイヨンの村内を突き進むこと数分。
俗にフェイDと呼ばれる 不死系モンスターがたむろするダンジョンの近くの道具屋の前が、いつの間にやら定まった俺達の『いつもの場所』だった。

思わず笑い出したくなるほど変わらない景色の中では、これまた懐かしい顔ぶれが、いつもと同じ穏やかな時間の中で、他愛のない世間話に花を咲かせていた。

いつの間にやら、村の中は迷うぐらいに大きく様変わりしていたが、弓手村へと続く道と同じく、ここを取り巻く空気は以前と変わっていない。
記憶の中と同じ温度で満ちる木々の香りに、自分の中の凝っていた時間の流れが急速に『今』へ追いついてゆくような、奇妙な感覚を覚える。

軽やかに輪に近づいてゆくクリエーターの女性――マディーリカの気配にいち早く気がついたローグが、すっと顔を上げて声を投げかけてくる。

「お、マディ。ジュース買ってきたか? 結構早かったじゃねぇ……かぁぁぁ?」

そのまま、ぽかんと口を開けて止まってしまったローグの素っ頓狂な声に驚いたのか、「どうした?」といいながら会話を中断させて次々と視線を上げたメンバーの瞳が、マディに捕獲されたままの俺の姿を認識して。
ローグと同じ『驚愕のハニワポーズ』で固まった。

……いや、そこまで驚かなくても……いや、驚くか……?


「えっ……ちょっ!!? もしかして、リーっ!!!?」
「……幽霊じゃないですよね? 生身ですよね??」
「ほんとにほんとにホンモノなの!?」
「生きていたんですか……良かった…」
「……っ!!! ……まてっ………お、お前らなぁ……俺の生存確認作業はいいが全力で顔をつねるな! 痛いだろっ! クルセと騎士が本気出したら俺の顔が変形する~っ」


一瞬にして精神ピヨピヨ状態から回復し。
全身全霊全力タックルで飛びついてきた同じ顔の姉弟が、左右から俺の頬を遠慮なく引っ張ってくれる。
ちなみに、クルセイダーが姉で騎士が弟という能力値的にとても固い双子だったりする……いやほんと、マジで痛いですからっ!

「少しぐらい造作変えた方が男前になるっつーもんじゃねぇの? カナ、シエ、オレの分もよろしく~」
「同感。出す顔がなくってうじうじ腐ってたに違いない、根性が青臭いソコの出戻りまーくんにあたしの分もよろしくぅv」

口調は軽いくせに目だけは笑っていないローグの男とウィザードの女が、ここぞとばかりに双子へ追撃指示をかましてくれる。
「ラジャ!」と唱和しながら、二人は更に俺を遠慮なしにもみくちゃにしてくれる……いやちょっと、ニヤニヤ笑ってないで誰か一人くらい止めてくれ~~~っ!

攻撃をかいくぐって必死に視線を巡らせると、唯一会話に参加していなかった見知った顔のアサシンが目に入る。
頼む、助けろっ!…と、俺の願いを託した瞬き型SOSモールス信号に気がついたのか。
腕組みをしながら黙って成り行きを見守っていた孤高のアサシンは……無表情のままで、自分の分もといわんばかりに小さく片手を上げた。


……ブルータス、おまえもか。 _| ̄|○


マウントポジションをとられ、がくっと首を垂れた俺の姿を、さすがに哀れと思ったのか。

「カナ、シエ。それくらいで許してさし上げてくださいな」

なおも首を締め上げようとしていた双子の攻撃を、あたたかな声がやんわりと押しとどめる。
俺にとっては神に仏なマディの声だったが、そのほかの皆さまにとってはとてつもなく不満だったらしい。
「えー、でも」「これくらいじゃ」……と、口々に零れる不平たらたらの声から俺を救ってくれたのは、全く見知らぬ他人の声だった。

「あの……はじめまして、でいいんでしょうか~?」

おずおずと言った調子で口を挟んだ声の主は、まだあどけない顔立ちの少年で。
ようやく1次職に合格したばかりというところだろうか。
身に着けたアコライトの職衣がまだこざっぱりとしている。
プリーストを目指しているのかモンクを目指しているのかは分からないが、この服の裾がボロボロになる頃には立派なニ次職へとなることができるだろう――そんな意志の強さを感じさせる表情が。


  ――ここにはいない。
    彼を。
    思い出させる、から――


「……おぅ、はじめまして。……さすがにまだ若いなぁ」
「少し前にここのギルドに入れていただいたばっかりなんです。えっと、マディーリカさん、この商人さんもギルドに入られるんですか?」
「……いや、俺は、その……ちょっと昔馴染みのマディに誘われて寄っただk……」
「紹介するわ」

アコライトの疑問に返そうとした俺の声に被せるように。
クリエーターの澄み切った声音が、凛とその場を制した。


「これが――かの有名な、うちの放蕩ギルドマスターよ」
「えぇっ、この人がっ――!? ……BSさんじゃなかったんですか?」


………。
………。
………(  Д ) ゚ ゚


「Σ………おいっっ!!!!」


気色ばんで叫んだ俺を声を待っていたかのように。
ぐるりと俺を囲んだ馴染みの顔ぶれどもが、見事なほど同じ角度で首をかしげた。


「「「「「何か問題が?」」」」」


問題大アリだろうっ!!
性格も能力も職業も凸凹だらけの面子のくせして、こんなトコで一糸乱れず完璧にハモるなーーっ!!


「俺はとっくの昔にギルドを抜けてんだよっ! いない人間がギルマスだなんて、どう考えても常識的におかしいだろっ」
「へぇー。勝手に逃げ出したくせに、ギルドブレイクもできないような根性なしに『常識』とか言われたくないですよ」
「リーの脱退理由がふざけすぎなのぉ。なーにが『俺の居場所はここじゃない』よっ、バカにしないで欲しいわぁ」
「いくらのんびりしすぎていると言われる私でも、納得できかねる事態というものがありますわ」
「君ね、自分がどんだけ溜まり場依存症か知ってた? ……ここが一番大好きで、仲間を守りたくって仕方なくってギルド作ったくせに。リーの分際で何をカッコつけてんだか」
「大方このおぼっちゃんは、のっぴきならないお家の事情が持ち上がって、迷惑かけたくないとか勝手に自己解決しやがって、覚悟の英断とやらをしたんでしょうよー。それで失踪してりゃ世話ねぇっての」

……ぐぅの音も出ないとは正に今のこの状況だろう。
立て板に水のごとくに降り注ぐ言葉の嵐に、針のムシロに座らされているような気分になってくる。
チクチクと刺さりまくる視線に二の句が次げず、有無を言わせぬ迫力に思わずたじろいでしまう俺の視界の端っこで、無言のアサシンが、やっぱり無表情のままでいちいち頷いていた。

……昔っからあまり意思表示を示さないほうだったが……声に出さないだけで、実はお前さんも相当怒ってますか……?・゚・(ノД`)・゚・。



口々に罵詈雑言を浴びせかけてくれる仲間たちは(涙)、遠慮なく俺を詰ってくるくせに……その表情には責めるような響きはひとつとしてない。
見知った顔の、懐かしい空間。
何も変わらない。
ずっと変わらない――やさしさ。


  決して、自分一人だけが時間に取り残されていた訳ではないのだ……と。
  

気がついて。
胸が――熱くなって。

けっして口には出さないくせに、伝わってくるみんなの想いのあたたかさに――喉の奥底が震えてくる。



「………俺、またここに戻ってもいいのか……?」



ぽつり、と掠れた声で呟いた俺の言葉を受けて。
はぁ……と、一斉にため息がこぼれ落ちた。


「馬鹿ね」
「馬鹿ですわ」
「馬鹿だな」
「馬鹿だよ」
「馬鹿だ」
「……オイっ!」

しんみりしていた俺の純情な気持ちを一瞬で踏みにじるなっ!
思わずつっこんだ俺の声をさらりと無視して。
何気に最強クラスの女性陣がすっと眉宇を寄せながら、わざとらしくこくりと首をかしげた。

「だって、それを決めるのは私たちじゃありませんもの」
「それはさぁ、ギルマス代理さまのお役目ってやつよねぇ~?」

交わされた意味あり気な視線と、かもし出される不穏な気配に俺は思わずこめかみを抑える。
彼女達が囁く代名詞の意味に心当たりが……ないとは言わない。

……いや本当は。
最初から、とても……気になってはいたのだけれど。


「あのさ……ギルマス代理って……誰なのか聞いてもいいかな~?……なーんて……」


  気がついていた。
  口にすることができなかった。


一番、会いたくなかった相手。
彼の姿がないことに安堵している自分を知っていたから。



  ――本当に?




「誰って……ねぇ?」
「――キア、ですよ」
「……………え?」



まだ幼さの残るクルセが朗らかに笑って。
ゆるやかに微笑みながらマディが告げる答えに、俺は言葉を失う。








「………ィ」



  くるしくて、くるしくて。
  どうすればこの引き裂かれるような胸の痛みから逃れられるのかわからなくて。
  幾度も呪文のようにくりかえし、名前を呼んだ。


「……ヴィ……」


  届かないとわかっている。
  無駄なのだとしっている。
  けれど、それでも自分は虚空に向かって同じ言葉を叫ぶ。







近づいてくるその声に。
体の芯がふるりと震える。



俺の正式な名は、リー・クウェアヴェル。
発音し辛い上にいちいち口に出すのも面倒なので、普段は族名である『リー』と呼ばせている。
たった一人の、例外をのぞいて――。


「アヴィっ!」


その名を口にするのは、一人しかいない――たった一人にしか、俺が認めなかった。
強い口調のその声に背を打たれ弾かれるように顔を上げて振り返る。
深い深い緑の髪が、色濃い木々の中にあってなお、鮮やかにその存在を浮かび上がらせて。
そこには、記憶の中の少年の面影と何ひとつ変わらないくせに……まったく知らない、大人びた顔の青年が立っていた。



(3へ続く)

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