[SS-SW] うそつき未満

ばかっぷるな未来編。

リバっていうより、そろそろ百合だと認めてもいいような気がしました。
どっちも可愛いんだーっ(叫)

あ、佐久間も。
(思い出した)



■ウソツキ未満



「ひゃっほーい」

判で押したような典型的歓声を上げて駆け出したのは、インドアのクセに無駄に動きが早いと定評の青年だった。

「いやもナイスタイミングってやつで、俺たち天才じゃない? やっぱ見ごろって今だったんだって、な、な?」

言葉の内容ことは疑問系だが、彼の視線はあらぬ方に釘付けだ。
ここ数日ですっかり春めいた陽気にさそわれてか、桜並木を通りすぎる女性たちの足取りは軽く、衣類も薄い。
すっかり冬装備を解除した二の腕やら膝下に、つい目が言ってしまうのはわからなくはないが……どっちの『花ざかり』を目当てに花見に行こうと誘ってきたのだか、分かったものではない。

「何でアノ人、あんなにウザいの……」

せわしない青年から遅れるほど二十歩ほどで立ち止まった褐色肌の青年が――いや、背格好こそはいっぱしの大人並にあるし、何か運動でもしているのか引き締まった体躯には目を見張るものがあったが、彼の声にはまだ少年らしい伸びやかさを感じられた――褐色肌の少年が、心底うんざり、といった体でため息をついた。
少年の隣で同じように足を止めた青年が、茶色の髪をふわりとなびかせ、少年を見つめて小さく笑った。

「春だからねぇ」

穏やかな青年の声音に、少年は形のよい眉をぴくりと引きつらせる。
すっと息を吸って開きかけた口を、思いなおしたかのように閉ざす。
何かをあきらめた様子で、少年は小さく肩をすくめた。

「それって佐久間さんの頭がってこと?」
「えーと。うん、そうだね」

にっこりと笑顔で即答肯定。
優しげな顔をして、茶色の髪の青年は結構容赦がないようだ。

「もう四月になったんだねぇ……時間が経つのって早いな。中学生だった佳主馬くんも、もう大学生だし。社会人の佐久間が暇をもてあましてるのはどうかと思うけど」
「ほんと、健二さんって佐久間さんに対して遠慮がないって言うか(アノ人が貴方に対して)気安いって言うか……」

微妙に内容がかみ合わないまま、穏やかに会話が流れる。
と、とつぜん。
何を思い出したのか、青年は「あっ」と小さな叫び声をあげた。

「健二さんどうしたの?」
「あー、えーと、うん。ごめんね佳主馬くん、驚かせちゃって。大したことじゃないんだけど……」

言葉を濁す健二に、いいから言ってと少年が詰め寄る。
すっかり追い抜かれた頭一つ分くらいの身長差から言われると、悪くなくても「はいごめんなさい」と口走ってしまいそうになってくる。
まったくどっちが年上だかわかったもんじゃないな、なんて思いながら、そんなやりとりすらも楽しいとか感じているのだから本当に自分はどうしようもないと健二口元が笑みを形づくる。

「また今年もエイプリルフール忘れちゃったなって、それだけなんだけど」
「やりたかったの?」

覗き込んできた佳主馬の瞳がまんまるくなっている。
普段はほんとに美形ってこういうことをいうんだなと思うくらいに綺麗な顔立ちなのに、きょとんと目を丸くすると急に子どもっぽくなる。
その顔がとても好きだと思っているのだが、それを指摘すると機嫌を損ねることがわかっているので、健二はそ知らぬ顔で言葉を続けた。

「おおっぴらにウソがつけるってなんかいいなって。心が沈んじゃうようなのは嫌だけど、楽しくなるようなことなら歓迎だよ」
「ふーん、あんまりイメージじゃないけど。健二さんってウソつかれてる方が多そう。しかも気がつかなそうだし」
「ひどいなぁ佳主馬くん。僕だってやられっぱなしじゃないんだよ?」

何気にだまされる側であることは肯定しつつ、「といってもなかなかそんな器用なウソなんて出てこないんだけどね」と微笑みながら頬を掻いた健二の横顔を、まぶしそうに目を細めて少年が見つめる。

「……ドラえもんの最終回みたい」
「なに、それ」

佳主馬の口から出てきた意外すぎる言葉に、今度は健二の目がまるくなった。
そうすると彼のアバターのリスにそっくりで、童顔が更に幼く見えて可愛いな……と思っても、口には出さないくらいの分別が佳主馬にもあった。
思わず腰に手はのびそうになったが。

「テレビでやってた。なにかをしゃべると逆の事柄が起こってしゃべったことがすべてウソになる飲み薬でさ、気持ちと逆のことを言い合ってた。確か四月一日って設定だったよ……それ、やってみる?」
「へ、なに?」
「エイプリルフール」
「……えっ、いま!?」
「そ、いま」

冗談かと思いきや、佳主馬の目は真剣だ。

「俺は健二さんのことが嫌い」
「………」
「だいっきらい。一緒にいたいなんておもわない」
「………」
「いますぐいなくなって。このさきずっとえいえんにとなりにいるのがおれであってほしくない――っ」

やさしく唇に押し当てられた指先に、言葉が、さえぎられる。

「……なんて顔してるの?」

むすりと唇を閉ざした佳主馬の視線を、優しい茶色の瞳が受け止めた。

「だって……やっぱり、言いたくない」

君から言い出したくせにというのは簡単だが、そこは空気を読むのが年上のつとめというものだろう。
苦笑しながらかかとを上げて少しだけ背のびをして、ぽふっと頭を手のひらで包み込む。

「ウソだってわかってても、健二さんにこんなウソつくの嫌だ」
「うん、ウソだって分かってても、僕も嫌だな」

ちょっとだけ痛い……と笑いながら呟いて、頭からゆっくり降りてきた健二の手のひらが、佳主馬の頬を包み込んだ。
向かい合った瞳がゆらめいて、ゆっくりと近づいてゆく。

「おーい、お二人さんってば。たこ焼き冷めるぞー!」

場違いなほど底抜けに明るい声が耳をつんざき、近距離の二人の動きをぴたりと止める。

「だからっ、どうしてアノ人はこういいところでっ!」
「――メガネ、曇ってんじゃない」
「……け、健二さん?」
「佳主馬くん、いこっか?」

佐久間にたっくさんおごってもらおうね、と眩しいほど清清しい愛しい人の笑顔が――佳主馬には何故かそら恐ろしく感じられたとか。






「……ったく、放っておくといつでもどこでも即席でいちゃつきやがって。この年中常春バカップルめが」

佐久間なりの苦労があったことは言うまでもない。


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