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[SS-SW] Present for you

佐久間視点で夏→ケン←カズなほのぼのちっく。



■Present for you


「健二くん、端っこ持って~!」
「あ、は、はい! これでいいですか?」
「うん上出来! 緑と赤のリボン巻きつけるだけでも、それっぽく見えるね! じゃあ次はケーキの切り分けね。ハイ」
「あ、ちゃんとナイフも持ってきてるんですね。さすが夏希先輩準備がいいです……じゃなくって、僕がやるんですか!?」
「うん、よろしく。だってあたし、等分とか苦手で。健二くん得意でしょ、そーゆーの」
「いやあの、僕だって数値上では得意ですけど、手先が器用ってわけでは……はい、やらせていただきます。でもこのサイズで3等分は大きくないですか? 6つにしといた方がいいのかなぁ……いやでも」
「何でも良いからザクっとやっちゃいなよ! ドシュッと!! ドバっと!!! ドッカーンと!!!!」
「夏希先輩の声援を受けると……なんだか破裂しそうですね、このショートケーキ」

これは、いったい、どういうことなんでしょう。

「――っかしいな。俺、部屋間違いました……?」

思わず振り返って開けっ放しのドアのプレートを確認する。
うん、ちゃんと書いてあるよな、『オタク部』って。……いやいや、『物理部』って、二重線の上に。

「あ、佐久間くんおかえりー。甘いもの平気? もう持ってきちゃったからだめって言っても一口は食べてくれると嬉しいんだけど」

艶やかな黒髪をひるがえして、にこやかな笑顔で迎えてくれたのは、学校イチの憧れの女性、夏希先輩だ。
彼女の後ろでは、赤と緑のリボンでぐるぐる巻きに拘束された……もとい、飾りつけされたPCが見える。
確か自分が近所のコンビニに飲み物を買いに行くために席を立つ、ほんの20分ほど前までは、いつもと代わり映えのないモノクロームな空間だったというのに。

「え! まさか夏希先輩の手作りですk」
「あははは、まさか~。あたしに出来るわけないでしょ?」
「佐久間ぁ、このケーキ3等分と6等分どっちがいいと思う?」
「どっちでもいーっつぅか、わざわざ3とかいう超高等技術に挑戦するより、4つに切った方が切りやすいじゃないの。食べれる人が残り食えばいいんだし」
「あそっか。佐久間えらい、その案いただき」
「まぁ当然ですよね~……じゃなくって、その前にさ、今のこの状況に関する説明が俺に対していっこもないわけ? ねぇ、ねぇ、めぇ~!?」
「あっ! 佐久間くんが鳴いた~!」

手を打って楽しそうに笑い出した我らが憧れのマドンナ(といっても差し支えないくらいの人気な)夏希先輩に、俺は引きつった笑いを返す。
いえもう、笑ってくださって大いに結構なんですけどね。

いくら世界を救ったヒーロー(たち)と言えども、所詮は現実世界においては女性との縁が限りなくか細い一介の男子高校生。
ただいまナイフ片手に目の前でケーキと格闘している冴えないとしか評しようがない彼こそが、実はこの夏とんでもない活躍をしてくださったご友人サマで。
すったもんだの末に、憧れの先輩とちょっとはいい雰囲気になったものの、進展のしの字も見せずに年の暮れ突入とか。
遠まわしに言ってもなんら効果はないと知っているので、「今年のクリスマスはどーよ?」…とか探りを入れてみたらば、「どうもこうもあるわけないだろ!」……と、情けない顔でしょんぼりされてしまった。
そんなトコまで予想通りのダメ男でどーすんだよ、もったいないヤツだなぁ……とか。冷やかし気味にからかったりしていたが、全く色っぽい話になっていないという状況にほっとしてしたというのも事実だ。
たとえ会話の99%がくだらない日々の出来事だったとしても、なんだかんだで、バカを言い合う仲間がいなくなるのはもの寂しいものだったから。

かくして、冬休み前日というこの12月24日は、ハモることのないサミシイしいシングルベルをかき鳴らしつつ、クリスマスイルミネーションの代わりに RGBのモニターの光を浴びながら、クリスマス商戦真っ只中かきいれどきのOZショッピングモールの保守点検バイトを遂行しようと、男同士の固い(寒い) 約束を交わしたのだ。

あ、ちょっと、空しいとか言わないでくれる?
世の中の(推定)8割のオトコノコは現実から目をそらして生きてるんですからね!

……まぁ、そんな経過があったものだから。
想像を超えたいまの状況にちょっとばかり言葉を詰まらせてしまう。
いやね、頭の回転はついていってるんですけどね。
俺ってば、状況把握能力はスペシャル級でございますから。

「ちょうど佐久間が出かけたくらいのタイミングで夏希先輩から連絡があったんだ。これからケーキ持ってくから一緒に食べようって。先輩のお母さんがね、夏のお礼に持っていきなさいって、僕らのためにケーキ焼いてくれたんだって!」
「――まーなんとなくその辺は想像は出来ますけど。ってかお前から電話できるはずないしな。そんな勇気や甲斐性があれば先輩もキングも苦労しないでしょーし……(俺の苦労も確実に目減りするでしょーし)……でもなんでその時点で物理部の主様である俺に連絡ないわけ?」
「主って……佐久間が勝手に根城にして居座ってるだけじゃないか」
「いいんだよ。部屋に一番長くいるのがヌシなんだよ。部室使うなら、俺に一言断りいれろって」
「だって佐久間、携帯置いてったじゃんか」

言われてはっと気がつく。そういや置いてったっけ。
iPhoneはいろいろ機能がくっついてモバイル代わりになって便利だけども、かさばるんだよな……とか言いながらモニターの前にぽいっと。
そりゃ連絡が後手でも仕方ないか。

「あと、何も知らずに帰ってきたら、びっくりするかなーって思って」

ホントは昨日OZで会った時にいわれてたんだけど……と、したり顔でふふっと笑ってケーキ入刀してる相手はものすごく楽しげだ。
はぁ……とあからさまなため息をひとつ。
お前さ、ほんと俺に対しては態度違うくね?

「……そりゃ驚くでしょうよ。自分の正気を疑ったって」
「そう? ほんとに? やった!」
「……健二くんと佐久間くんって、ほんっとーに仲いいよね。なんか、気を許してるっていうか……」
「えっと、まぁ。佐久間には遠慮しても仕方ないんで」
「ちょっ! をまっ!!?」

ソレひどすぎね!? ……と言いかけた口で――そのままストップ。
馬鹿を言う親友に詰め寄って、頭をはたこうとしていた俺の右手もフリーズ。
相手の肩越しに視界に入ってしまった美人のエガオに、つっと背中に冷たい汗が落ちる。

「……ちょっと妬けちゃうかな~~……」

学校のアイドルさまが笑いかけてくださっているのですが、どう自分をごかまして見ようとも、確実に目が笑ってくださいません。

イヤ待って。
ものすごく待って。
超待って。

ジト目で見ないでくれますか。
っていうか、無駄なけん制しなくてもいいですから。
自分で言うのも何ですけど、人畜無害な草食系男子ですから。
1万年と2千年前から愛してましたとかいう超設定とか、実は前世で一緒に人類滅亡を阻止しようとした天使でしたとかいう厨設定とかありえないから。


『ホント……ずいぶんと楽しそうだよね』


へ? 今度は後ろから?
ずいぶんと淡々とした、少年の声には聞き覚えがある。
ありすぎる。
これって……キング……だよな??

チャットではなく、webカメラに切り替えているらしい。
ふりかえると、モニター越しにふてぶてしいという言葉がぴったりの表情で肩膝を抱えた、褐色の肌の少年が映っていた。
画面の端からあふれでるキングのキングたる威圧感とか、そんなの持ち合わせてどーすんのという色気だとか、これで中学生だって言うんだから末恐ろしい。

「あ、佳主馬くんおかえり、早かったんだね。学校のクリスマス会はもういいの?」
『健二さんってば、いつのこと言ってんの。ソレは一昨日に終わってるよ。今日なんかにしたらPTAからクレームくるよ』
「そうなんだ。だから今からでも大丈夫って言ってたんだね。……でもお家の方はいいの? パーティするんでしょ、準備とかお手伝いとか」
『母さんが手は足りてるって。別にこっちが夜中になるわけじゃないでしょ。夏希姉だって夕飯には帰るんだろうし。今だけなら何も問題ないよ……っていうより、僕邪魔だった?』
「そんなわけないよ!」

えーと。
会話だけ聞いてるとほほえましいんですよね。
親戚のおにーさんとおとーとぶんって感じですかね。
でもですね、なんていいますかね。
キングさんってば、会話しながらも横目でしっかり俺を睨んでますよね――わかり……たくアリマセン。

「そうよ佳主馬。『みんな』で楽しめたらいいねって、健二くんが言ったんじゃない」

先輩のちっともさりげなくない強調句が心臓に痛いです。
え、ちょっと、お二人さまとも。
もしかして、ソレってば俺に対する(いらない)嫉妬とかいっちゃいますか……?

正直、俺は。
飛び交うトゲに全く気がつくことなく、目の前でのほほんとして会話を続けている、いる親友の胸倉を掴んでこう叫びたかった。


何 故 俺 を 巻 き 込 ん だ し !?


獰猛な牙を剥く猛獣しかいない気がする現実に凹みたくなる。
なにこのアマゾンもビックリなジャングル万歳状態。
シングルなベルも鳴らせない俺乙――と心密かに涙する自分を知ってか知らずか(知るはずないよなちくしょう)。

「みんなでお祝い事するのって、すごく楽しいね」

そんでもって、なんて鼻歌でも出てきそうな親友の嬉しそうな笑顔に見るにつけ、なんだか……ほっとするってどういうこと?
あれ、えっ、ちょっと俺。
M気質な自覚とか持ち合わせてないんだけど。

「あ……えっと。健二くん切り終わった? みんなで食べよっか」
『あ……んっと。健二さん、お祝いくらいなら一緒にできるから」

意図していなかったからこそ、出てきた言葉は真実。
瞬間的に重なった言葉で、気がつかされる。

――ああ、そういうことか……。

決して家族中が悪いわけではないけれど、家族のあたたかい絆というものからは程遠かった彼は、『みんなで過ごす』という光景にずっと憧れを抱いてきたんだろう。
これはただの推測。だけれど、普段の言動の端々からにじみ出る依存への恐怖感から追ってみれば、この考えは間違ってはいないはず。

知らない人に囲まれることに恐怖を抱いているはずなのに。
ひとりになることを恐れ……その感情の名前を知らずにいる子ども。

結構どころじゃなくやっかいな精神構造の持ち主だが、打てば響くように帰ってくる答えを気に入っていたし、複雑な感情迷宮もひっくるめて彼なんだろうなと思い、お節介なくらいに首を突っ込む自分の役割も気に入っていた。

だから。
二人はただ闇雲に『小磯健二』という、自分をもってしても複雑怪奇な人物を追い詰めようとしているわけではなく。
今までのかれとか、これからの相手のこと、ひっくるめて。
コイツの事、理解しようとしてくれてるんだなって、分かって。
……ちゃんと、想われてるんだなって、分かって。
少しだけ、枷が軽くなったような気分になる。

――ただ、しつこい様だけど、頼むからココに俺を巻き込こまないでくれ!

敬くん強い子だけど泣いちゃうんだから。


……すまん、キャラじゃなかった。


自分の思考の寒々しさに思わずふるりと肩をすくませた瞬間。
習い済ませたように、ぶるる…とバイブ音が響いた。

「――何ぼーっとしてんの? 健二、お前のじゃん」
「え? あ、あれ。ホントだ………」

くいっと人差し指を机の下に放り出していた彼のカバンに向ければ、慌てて手を伸ばし新調したばかりの携帯を取り出した。
まだ操作に慣れていないのか。
おぼつかない手つきでボタンを押して画面を開いた瞬間、彼が小さく息をのんで。
わりと付き合いが長い自分でさえ滅多に目にしたことがないような、非常に無防備な表情で、あ……、と小さく声を上げた。

「どうした健二。……いいことでもあったっての?」
「え、えと……うん」

どうしよう、と困惑したような、とほうもなく、嬉しいような。
戸惑いと喜びがごしゃまぜになったようなカチコチの顔で、彼は小さく息を吐く。
すっと、意を決したかのように顔を上げて。


「……父さんから、だった」



――メリークリスマスって。


囁くように、落とされた言葉と。
消え入りそうな、泣き出しそうな笑顔に、俺と先輩とキングはさっと目を合わせて。
はぁ……と、申し合わせたように小さく息をついた。

嬉しいなら嬉しいって言えばいいってのに。

…なんて、言葉に出来たら苦労なんてしない。
ひとりでいることに慣れすぎてしまった心。
かけがえのない唯一人と過ごす時間よりも、誰かと――心を許せる『ひとたち』と一緒の時間の方を求める彼を、責めることなど出来ない。



――ま、結局、コイツに甘いんだよな。


まぁ、仕方がない。
今日はつきあってやるかと、出来た親友たる俺は心を決めた。


メリークリスマス!
聖なる夜は、世界中の誰に対しても等しく降りる。



















「ところで、健二くん。お父さんからのメールって、メリークリスマスだけだったの?」
「あ、いえ。写真も添付されてたんですけど……見ますか?」
「見る見る~」
『僕にも見せてよ』


ピピッ
ピロリン


―――をい?


「小磯……さん。今まで疑問にもしていなかった自分もなんだげど、お前んちの親父さんって、何やってる人なんだ……?」
「え? 普通のサラリーマンって、言ってなかったけ?」
「「『……普通?』」」

展開された写真には、たぶんこれはクリスマスツリーを意図したモノなのではないかと思われる、針金で固定されたツタ系の物体が映っていたのだが。

――どう見ても、現実的にあるまじき七色なんですけど……っていうか、ここ、日本じゃない……よな……?



友人という名の生物の底知れなさを実感した瞬間でもあったそうな。










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