[SS-SW] (幕間)

ポーラ・クラウン の佐久間視点

30分間で健二さんが何をしてたのかと言う話。
ファイル名は「がんばれ佐久間」でした。



(幕間)



ぱらっぱーと携帯の着信音が部室内に響いた瞬間、なんとなく嫌な予感がした。
どことなく気が抜ける電子音は、いつもならまだ一緒にこの部屋にいるはずの友人からの電話を知らせるもので、「用事があるんだ」とわざわざ断りを入れて帰って行ったくらいなのだから、本来ならいまこの時間に自分に連絡がくるはずなどないのだ。

「頼みがあるんだ」

通話をONにするやいなや、開口一番の無遠慮極まりないセリフに、お前は俺に電話するときは頼みごとしかないのかとつっこみたくなる。
親しき仲にも礼儀あり。
普通なら「いま電話して大丈夫か」くらいの確認はするだろうに、全く持ってこっちが聞く体制だと信じて疑わないで用件を言い出すとはどういうことかと。
お前、俺が今アナタ様のバイト分まで受け持ってるってほんとに分かっていやがりますかぁ?……ま、大した負担でもないからコーヒー牛乳2パックで手を打ってやると言い出したのは俺の方ですけどネ。
目の前にいたら確実にボサボサ髪の後頭部を遠慮なくどついてやるのに。ああ、もうバーチャルでいいから「無体を言うのはこの口か」とつまみたい。左右にひっぱったら、彼のアバターのリスもどきのごとく、さぞかしよく伸びることだろう。
ああああ、やりてぇえええええーつまみてぇ伸ばしてぇええーーーっ!

「……シリコンとリアルファー素材プログラムなんて手持ちにありましたかね」
「え? シリコン? 佐久間、何かのモジュール組んでるの?」
「んー、いんやこっちの話。……ほんで、小磯さんってば、今度は何を思いついちゃったワケぇ?」

弾力性のある毛皮の感触をOZ内で再現することはできるか……と手持ちのカードで仮想プログラムを走らせ、ついでにリスのほほ袋を脳内で思いっきり引き伸ばしたら少しすっとしてきたので。
気を持ち直して相手の話の水を向けると、

「あ、それなんだけど…」

落ち着いた耳障りの良い声で、お願い内容がよどみなくスラスラと流れてきた。
相変わらず、これが不思議でならない。
大人しくて内気で引っ込み思案で押しが弱くて諦めが悪くて……という鬱陶しいとしか言いようがないくらいの負要素を持ち合わせたこの友人は、なぜか説明口調になると激変するのだ。
要点を確実に捕らえて、お前はプレゼンテーターかよってなくらいに実に分かりやすい。
普段は人前に出るだけであがって口ごもってばかりで挙動不審なくせに、何だってこう変わるもんなんだか……優柔不断なんだか肝が据わってんだか、ホントわかんないヤツだよな――面白いけど。

「……はぁ、ふんふん……なるほど。じゃ、グラフィックだけってことか」

今回のお願いの内容は、簡単に言うと、OZ内で使用する手持ちのアイテムの一つを、効果を変えずに見た目だけ上からカバーをかけるみたいに変化させたいってことらしい。
自己改変になるので本当はあまり推奨できたことではないし、『できる』と口にするのも考えモノな行為だ。
……が、根幹を書き換えたりするものではないので、まぁそれくらいならいいかと、視線は画面に固定したまま。パチパチと指を滑らせて。まるで曲でも奏でるかのように、俺は軽快にキーボードを叩きはじめた。
保守点検と併走してても大した作業にはならない。
ならない――が……なんといいますか。
問題はソコじゃないよな。

「つーか、そんくらいならお前自分でもできんじゃん。何でわざわざ俺がやんなきゃなんないってのよ」

末端の末端の末端で更にバイトなんて身分ではあるが、電話相手である彼だって仮にもOZの保守プログラムを解析できるくらいの腕をもっているのである。
プログラミングともいえないような処理作業を出来ないとは言わせない。

「あーうん、そりゃ出来るんだけど。僕がやるより佐久間の方が絶対早いから」
「ま、そりゃそうですけどね。……ん? 早い…って、コレお急ぎなワケ?」

何の気なしに口にした言葉だった。
片手をミルクティーのパックに伸ばして一口飲み込む。
この友人――小磯健二という人間はなかなか難解な性格で、およそ人を頼るということがない。自分では気がついていないようだが、『依存する』ということを極端に恐れている嫌いがあるのだ。
そのことに気がついたのは――まぁ……それなりのつきあいの成果というべきか、たまたまウマがあったからというべきなのか。
互いに自分にどれだけの能力があるかもわかりきっていて、自分にならできると判断したからこそ、彼は一見無茶とも思える内容を俺に持ちかけてくるのだ。そこまで理解してしまう優秀すぎる俺さま佐久間さま。
気がついてしまったら無下に断るわけには行かないというのも当然の流れで……ああ、もう、なんなんデショウカネ、俺の立ち位置って。
――なんて、思いをめぐらせながら作業を進めていたせいだろう。
当然のように続けられた相手の言葉に、反応が遅れてしまったのは。

「うん、急いでる。じゃ15分後に」
「あー……はいはい。じゅうごふn……はいぃ~っ!?」

裏返った俺の声などお構いナシに。
頼んだよ、と弾んだ声で相手は言い切りやがりました。



ぷつっ

ツーツーツー



ちょっwww をまっっwwww





「――マジで?」




首と肩の間で挟んだ携帯から響くむなしい通話切れの音。







アンタ、あたいの、なんなのサーーーーーっ!(絶叫)




















きっかり15分後。
非常に有能なプログラマー佐久間くんは、お望みの品をOZのアイテムボックスに叩き込んでやりましたとさ。

「……何で出来ちゃうかな。俺天才過ぎ……」




――いいから家に帰れ。








おわり


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